研究実績の概要 |
顕性遺伝型栄養障害型表皮水疱症(DDEB)の細胞モデル作成のために不死化ヒト線維芽細胞を用いた。しかし、western blotによるVII型コラーゲンタンパクの検出を試みたが、成功に至らなかった。タンパクの発現量がより多いと考えられる不死化ヒト角化細胞を用いて実験を進めた。CRSIPR-Cas9を用いてCOL7A1遺伝子のExon73をターゲットにゲノム編集を行い、限界希釈法にてクローニングした。クローニングした細胞をサンガーシーケンスを用いてDNA配列を確認し、複数のクローンが得られた。代表的なクローンとしてclone 61E8では片アレルは正常で、もう片アレルには6塩基の欠失により変性したVII型コラーゲンタンパクを発現すると考えられた。また、clone 62F3では それぞれのアレルで3塩基、9塩基の欠失がみられ、両アレルともにナンセンス変異によりタンパク発現が消失すると考えられた。配列からは61E8がDDEB、62F3がRDEB(潜性遺伝型)の栄養障害型表皮水疱症のモデル細胞となることが予想された。 野生型(WT), 61E8, 62F3のそれぞれにて蛍光免疫染色を行うと、WT, 61E8では細胞内にCO7A1抗体にて蛍光されるVII型コラーゲンタンパクがみられたが、62F3では蛍光染色されるタンパクはみられなかった。また、western blotではWT, 61E8ではCOL7A1タンパクのバンドが得られたが、62F3では同様のバンドはみられな かった。これらの結果から61E8はDDEB、62F3はRDEBのモデル細胞となることが示唆された。Cas9を用いてさらに複数のクローンを作出した。合計22クローンが得られ、missense変異、nonsense変異、frame-shift変異など種々の遺伝子変異の組合せのクローンが得られた。
|