研究実績の概要 |
喫煙が関与する皮膚疾患は乾癬、掌蹠膿疱症、化膿性汗腺炎の3つである。いずれの疾患もQOLを著しく低下させ、しばしば難治性である。近年IL-8, IL-36が病態に関与することが報告されている。乾癬では治療選択肢が多いが、掌蹠膿疱症、化膿性汗腺炎は治療選択肢が少なく、病態に根差した新規治療法の開発が望まれている。われわれは耳鼻咽喉科領域の手術で得られた頸部皮膚由来のケラチノサイトを用いた研究を進めている。ケラチノサイトに対して喫煙刺激ならびにIL-17AまたはIL-17Fで刺激するとIL-36, IL-8の発現が亢進することを確認した。IL-17FはIL-17Aに比べると生理活性が弱いと考えられているが、乾癬の皮膚病変では約30倍程度高発現していることが知られている。そこでIL-17Fの投与量を増やすと、容量依存性にIL-36, IL-8の発現が亢進することを突き止めた。実際にIL-17Fを30倍まで増量するとIL-36やIL-8などのサイトカインの発現量がIL-17Aを上回ったことから、IL-17Fの方が臨床的にも重要性が高い可能性もあると考えられた。一方でIL-1についてはそのような傾向はみられなかった。従ってIL-17A, IL-17Fを両方ブロックするビメキズマブは喫煙が関与する皮膚疾患に対する有用性を検証するものと言える。つまり喫煙刺激がIL-17/IL-36 axisを強化させ、病変部の膿疱化を誘導することが示唆される。この結果は喫煙が関与する疾患である乾癬・掌蹠膿疱症・化膿性汗腺炎の病態メカニズムの解明の鍵になると考えられる。ビメキズマブはIL-17A阻害薬であるセクキヌマブやイキセキズマブに比べて乾癬に対する有効性が高いことが知られている。したがってビメキズマブが掌蹠膿疱症、化膿性汗腺炎に対しても適応拡大される可能性はあると考えられる。その際には臨床研究を含め、さらなる病態解明につながることが期待される。
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