研究課題/領域番号 |
21K16236
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中村 善雄 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 専任講師 (20528244)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 皮膚病理 / 乳房外パジェット病 / 組織透明化 |
研究実績の概要 |
令和3年度は同意の得られた複数の乳房外パジェット病の原発巣の検体を対象にCUBIC 法による組織透明化を実施し、その過程で組織に含有するメラニン顆粒を脱メラニン化をおこなった。原行の方法で透明化されるものの、日数を要すること、溶媒の融点が比較的高く、冬期には室温で結晶が出現するリスクがあることなどが課題である。その後、解析する蛋白質を標的とした抗体と反応させ、光発色処理を経た後に光シート顕微鏡で標的とする細胞や蛋白質の分布を解析した。透明化や脱メラニン化の過程では、組織を構成する細胞の位置情報や構成蛋白質の抗原性が部分的に失われる可能性があるため、処理後は表皮細胞、腫瘍細胞、血管内皮細胞、各種血球細胞、基底膜等のマーカーとなる諸蛋白質の抗原性が保持されているのかを免疫組織化学染色によって検討した。GCDFP-15の抗原性は保持されているものの、乳房外パジェット病における感度は必ずしも高いとは言えず、現在我々は乳房外パジェット病に特異的で浸潤に関係していると思われる蛋白Xに注目している。蛋白Xについて過去検体を用いて表皮内癌、浸潤癌の染色性を検討している。今後本蛋白での染色を行うことを考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染拡大により予定外の業務が増えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は安定的に解析可能となる至適条件を決定し、検体数を増やしたうえで、以下に例示すような検討を行い、Paget細胞の動態を明らかにする。 1)Paget細胞と表皮基底膜の二重染色によって表皮内におけるPaget細胞の増殖様式や真皮内への浸潤様式を解析。2)Paget細胞と諸々のT細胞の二重染色によってPaget細胞に対する抗腫瘍免疫の動態を解析。3)Paget細胞と血管内皮細胞の二重染色によってPaget細胞の脈管浸潤様式を 解析。4) 上記1)~3)等の検討より得られたPaget細胞の三次元的な動態の情報を、該当する部位の皮疹の所見や術後の再発・転移等の臨床情報と比較検討し、患者の術後経過や予後を予測し得るようなPaget細胞が三次元下で呈する病理組織学的な所見を見出す。 また、これらの検討の過程で臨床に反映可能な有益な情報が多数得られた場合には、対象を乳房外パジェット病に限ることなく、多様な皮膚腫瘍や皮膚炎症性疾患に拡大して解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遅延により、使用予定であった費用が令和4年度にずれ込んでいるため。
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