研究課題
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)は、クローン性造血(ACH)を背景に持つ成熟T細胞リンパ腫の一つで、がん細胞はT濾胞ヘルパー (TFH)細胞の特徴を持つ。造血幹細胞レベルで、TET2変異を獲得した後、がん細胞がG17V RHOA変異を獲得することで、AITLを発症するという多段階発がんモデルを背景とし、今回、TET2変異を持つ免疫細胞がAITLの発生を可能にするメカニズムについて、マウスモデルおよびヒトサンプルを用いて検討した。すべての血液細胞でTet2を欠損したマウス(Mx-Cre × Tet2flox/flox × G17V RHOAtgマウス)は約1年以内にTFHリンパ腫を自然発症したが、T細胞のみでTet2を欠損したマウス(Cd4-Cre × Tet2flox/flox × G17V RHOAtgマウス)は観察期間中にリンパ腫の発症は観察されなかった。したがって、Tet2欠損炎症細胞はAITL発症のがん微小環境ニッチとして機能していることが示唆された。マウスとヒトのAITLサンプルから得た5万個以上の細胞のシングルセルRNA-sequencing により、活性化明帯様および増殖を示す暗帯様胚中心B (GCB) 細胞の双方の性質を示す異常GCB細胞の著しい拡大が確認された。インシリコネットワーク解析により、Cd40-Cd40lgがGCB細胞とがん細胞群の相互作用分子として抽出された。AITLモデルマウスに抗Cd40lg阻害抗体を投与すると、生存期間が延長した。マウス腫瘍で異常に拡大した 異常GCB 細胞で発現している遺伝子は、TET2 変異ヒト AITL の B 系統細胞でも広範に発現していた。したがって、ACH由来のGCB細胞は独立したクローン進化を遂げ、CD40-CD40LG軸を介してAITLの腫瘍化に寄与している可能性が示唆された。
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Blood
巻: 140 ページ: 1937~1950
10.1182/blood.2022015451
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20220809140000.html