我々はPOEMS症候群患者骨髄にごくわずかしか存在しない特徴的な形質細胞をシングルセルRNAシーケンス法により抽出し、変異解析や遺伝子発現解析を行った。そのデータからモノクローナル交代をコードする可変領域のcDNA配列を特定し、さらに同配列を抗体産生発現ベクターに組み込み、モノクローナル抗体生成技術を用いて人工的にM蛋白をクローニングすることに成功した。続いて、クローニングしたM蛋白に対して反応するタンパク質をプロテインアレイにより網羅的にスクリーニングしたところ、2人の異なる患者由来のモノクローナル抗体に反応する候補蛋白分子Aを同定した。 今回、我々は候補蛋白分子Aと患者由来M蛋白が実際に結合しているのかを確認すべく間接ELISA法を行った。プレート上に抗原候補蛋白分子Aをコートし、クローニングしたモノクローナル抗体を反応させた。HRP標識二次抗体を用いて反応を確認したところ、強度は強くないものの反応を確認することができた。続いて抗原抗体反応がみられるかBiacoreを用いて確認を行った。リガンドとなる抗原候補蛋白Aをセンサーチップの金薄膜上に固定し、アナライトとして患者由来M蛋白をセンサーチップの表面に流しリガンドとアナライトが結合する反応をみたところ、こちらも強い反応とは言い難いものの波形から抗原抗体反応があるものと考えられた。 最後に我々は、候補抗原蛋白分子Aが患者血清と直接的に反応するか間接ELISAにより確認を試みた。しかし、患者血清に含まれる種々のタンパク質や抗体との非特異的反応を抑えることが難しく、明瞭な結果を得ることができなかった。これまでの結果はPOEMS症候群の患者でみられるM蛋白が候補抗原蛋白分子Aと結合する可能性が高いことを示している。今後はPOMES患者において候補抗原蛋白分子Aがどのような働きを果たすのか、詳細な検討を行っていく。
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