研究課題/領域番号 |
21K16242
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川島 直実 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (80844844)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 急性骨髄性白血病 / CBF-AML / PRTN3 / セリンプロテアーゼ / 好中球エラスターゼ |
研究実績の概要 |
本研究は、研究代表者が再発CBF-AML検体を用いた網羅的遺伝子変異解析、発現解析により難治性症例に共通して独自に見出したセリンプロテアーゼPRTN3遺伝子の発現異常に着目し、この分子が急性骨髄性白血病の再発・難治性、病態維持に及ぼす分子基盤を明らかにするものである。 これまでにshRNAを用いて同遺伝子を欠失させると、CBF-AML細胞株ではアポトーシスが誘導されること、マウス白血病モデルでは生存率が改善すること、これらのPRTN3欠失CBF-AML細胞がRas制御蛋白の発現変化を伴っていたことを確認しており、現在PRTN3がCBF-AMLの発症・進展に関わる経路を解明することを目的とし、研究計画を進めている。 本年度は、CBF-AMLにおけるPRTN3分子によるRasシグナル経路の活性化を評価するため、CBF-AML細胞株であるKasumi-1およびSKNO-1を用いて、shRNAによるPRTN3遺伝子のノックダウンを行い、Ras下流シグナルであるPI3K-AKT-mTOR、RAF-MEK-ERK経路のリン酸化活性化の変化をそれぞれの細胞株でウェスタンブロットを用いて確認した。この結果、PRTN3ノックアウト細胞においてMAPKのリン酸化抑制を認めた。PRTN3によるAML細胞の増殖機構としてMAPKを介したシグナル伝達経路の活性化の関与が示唆された。さらにRAS遺伝子に変異を有するAML細胞株において、同様の手法でこの経路への影響を検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度に計画していたPRTN3によるRasシグナル経路活性化の検討についてはおおむね実施できた。しかし、本年度さらに予定していたPRTN3によるRho-kinase/LIMK/Cofilinを介したAML細胞の接着性変化と増殖能のin vitro解析については、研究代表者の産前産後の休暇および育児休業により、研究を中断しており、遂行できていない。研究再開後すみやかに以降の計画を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroにおいてPRTN3によるRho-kinase/LIMK/Cofilinを介したAML細胞の接着性の変化について、PRTN3をノックダウンしたKasumi-1、SKNO-1細胞株においてリン酸化/脱リン酸化Cofilin、Actinの蛋白発現の変化、Rho-kinase/LIMK/Cofilin経路を介した細胞骨格・接着因子・細胞形態の変化を蛍光免疫染色を用いて観察し検証する。 in vivoにおいて、 PRTN3高発現/欠失による骨髄微小環境での細胞接着性と増殖能の解析を行う。C57/BL6Jマウス骨髄細胞にAML1-ETO9aをGFP標識したベクターを導入し、再移植することでt(8;21)-AMLマウスモデルを作成し、マウス白血病細胞においてPRTN3をノックダウンし、再移植することで、PRTN3欠失下での白血病細胞とマウス骨髄微小環境、骨髄間質細胞との接着性、白血病細胞の局在、ホーミングの変化をフローサイトメトリー及び骨髄標本の免疫組織染色にて評価する。 患者AML細胞をNOG免疫不全マウスに異種移植し作成したPDXモデルを用い、既存のセリンプロテアーゼ阻害剤を投与し、PRTN3発現の抑制、Ras経路、Rho経路の活性化抑制を評価する。マウスの生存解析によりAMLの増殖抑制効果を検証する。加えてRhoキナーゼ、LIMキナーゼ阻害剤との併用療法についても生存改善効果を評価する。 再発CBF-AML患者の経時的骨髄検体を用いてsc-RNA-seqを行い、キメラ融合遺伝子、KIT遺伝子やNRAS遺伝子などのドライバー変異獲得と、PRTN3発現の変化をクローン性の変化とともに単一細胞解析し、PRTN3高発現AML細胞群のphenotype、分化段階、クローン内のhierarchyについて特徴づけ、再発・難治性との関与を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の産後休暇・育児休業のため、当該年度の研究中断を要した。 研究再開後に当該年度に予定していた研究計画に基づく直接経費を使用する予定である。
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