研究課題
多発性骨髄腫は、骨に親和性を持ち、骨破壊病変を形成しつつ進展する難治造血器悪性腫瘍である。骨病変部では骨形成が抑制されているが、プロテアソーム阻害薬などの新規薬での治療奏効例で腫瘍抑制効果と骨形成誘導の逆相関が示唆されている。本研究では、骨髄腫骨病変微小環境の重要な骨髄腫支持細胞である骨髄間質細胞とその骨髄間質細胞から分化誘導された成熟骨芽細胞が骨髄腫細胞の生存・増殖に及ぼす影響とその分子機序を明らかにするため以下の検討を行った。骨髄間質細胞と骨髄腫細胞株を共存培養すると、骨髄腫細胞のIRF4-PIM2-cMyc経路が活性化され、骨髄腫細胞の生存・増殖が促進した。マウス前骨芽細胞株MC3T3-E1細胞に加えマウス骨髄由来骨髄間質細胞、ヒト前骨芽細胞株にBMP-2を添加し石灰化結節を形成するまで骨芽細胞分化を誘導させ骨髄腫細胞株を共存培養すると、これらの細胞は逆に骨髄腫細胞のIRF4-PIM2-cMyc経路を抑制しカスパーゼ3が活性化されアポトーシスを誘導した。成熟骨芽細胞では骨髄腫細胞のIRF4発現を抑制すると報告されているmiR-125b発現が誘導されていた。また、成熟骨芽細胞との共培養は、2日後より骨髄腫細胞にAMPKのリン酸化を誘導したが、AMPK阻害薬dorsomorphinの添加で成熟OB による骨髄腫細胞死の誘導活性が部分的に抑制された。一方、AMPK 活性化薬AICARを添加すると骨髄腫細胞に細胞死が誘導された。石灰化を呈する成熟活性化骨芽細胞は複数の機序により骨髄腫細胞に細胞死を惹起すると考えられた。
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eJHaem
巻: 3 ページ: 480~483
10.1002/jha2.402