研究実績の概要 |
我々は新規経口DNAメチル化阻害剤(OR21)の開発を行なっている。慢性骨髄性白血病(CML)の標準治療はABL1チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であるが、BCR-ABL1の変異やDNAメチル化の蓄積などにより耐性を示す症例もいる。以上よりOR21とTKIの併用により治療効果改善が望めないかと考えた。またCMLの治療目標はTKIを中止しても再発しない無治療寛解維持の達成となったが、DNAメチル化阻害剤により、より達成できないかと考えた。CMLの細胞株(BV173, K562, SUP-B15, KBM5)に対してOR21は濃度依存性に細胞増殖抑制効果、アポトーシス誘導効果を認めた。この際にLINE1領域のCpGメチル化低下とDNMT1蛋白の減少が認められた。DNAメチル化阻害剤のCMLへの効果メカニズムを解明するためにp53に注目した。p53欠失もしくは変異のある細胞株(K562, KBM5)ではOR21によりp21が誘導され、G2/M期での細胞周期停止による抗腫瘍効果が認められた。一方でp53野生株(BV173, SUP-B15)ではアポトーシスによる抗腫瘍効果が認められた。これらのことよりOR21はp53ステータスにより抗腫瘍効果の違いを有するがいずれの株においても有効であることが分かった。OR21とTKIを併用するとp53野生株においてもp53変異、欠失株においてもアポトーシスがより誘導された。RNAseqの解析から6つの癌抑制遺伝子(PTPN6,YPEL3,BTG2, LTX, SELENBP1, ALOX12)の発現上昇がOR21とTKIを併用することで認められた。またpublic dataからこれらはCML病勢進行により発現低下することも分かった。以上よりOR21とTKIの併用において癌抑制遺伝子の発現回復を介し、TKIとの併用効果があることが分かった。
|