Galectin-9を介したマントル細胞リンパ腫のBCRシグナル活性化機序の解明

2022 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 21K16246
• 研究機関: 京都府立医科大学
• 研究代表者: 塚本 拓 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50825049)
• 研究期間 (年度): 2021-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: マントル細胞リンパ腫 / B細胞受容体シグナル / galectin-9 / 糖鎖修飾 / 腫瘍微小環境 / galectin-3

研究実績の概要

マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma: MCL)は、ナイーブB細胞を発生母地とする難治性B細胞性リンパ腫の一病型である。MCLではB細胞受容体(BCR)シグナルの過剰活性化が疾患形成に重要な役割を担う傍ら、治療標的にもなっている。しかし、いまだMCLにおけるBCR活性化機序は未知であり、その機序解明は新たな疾患特異的治療開発に発展する基盤的知見になることが期待される。
糖鎖結合性レクチンであるgalectin-9(Gal-9)がMCLにおけるBCRシグナル活性化の調節因子であることを、in vitro実験系のみならず、MCLの臨床検体を用いた検証でもBCRシグナルを調整することを明らかにしているが、本年度は、MCLにおけるGal-9制御失調によるBCRシグナル過剰活性化機構の背景を解明することを目的とした研究を行ってきた。
具体的には、Gal-9と結合可能なある糖タンパク質に着目し、Gal-9によって細胞内局在を変化させBCRシグナルを調整すること、腫瘍微小環境依存的にGal-9認識糖鎖の修飾が調節され、BCR活性化に関与することを明らかにした。加えて、各種実験を進める過程で、Gal-9と同じガレクチンファミリーで糖鎖認識タンパクであるgalectin-3(Gal-3)もBCRシグナル調整機能を有することを明らかにすることができており、Gal-9と並行して機能解析が進行中である。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Gal-9と結合可能なある糖タンパク質に着目し、Gal-9によって細胞内局在を変化させBCRシグナルを調整すること、腫瘍微小環境依存的にGal-9認識糖鎖の修飾が調節され、BCR活性化に関与することを明らかにした。
Gal-9標的分子の網羅的解析による同定は実験系の確立がやや遅れている。
一方、各種実験を進める過程で、Gal-9と同じガレクチンファミリーで糖鎖認識タンパクであるgalectin-3もBCRシグナル調整機能を有することを明らかにすることができており、Gal-9と並行して機能解析が進行中である。

今後の研究の推進方策

MCLにおけるGal-9の新規標的分子の探索を目的としてproximity ligation assay法および質量分析を用いた実験を計画しているが、やや遅れている実験系の確立を目指す。
得られた新規標的分子の候補化のため、in silicoでの分子機能解析や、公開データベースを用いた事前検討の後、同分子の発現制御実験による機能解析、臨床検体を用いた発現量の検討等を進めることとしている。

研究成果

• [雑誌論文] Expression of activated B-cell gene signature is predictive of the outcome of follicular lymphoma (2022)
  • 著者名/発表者名: Tsukamoto Taku, Tokuda Yuichi, Nakano Masakazu, Tashiro Kei, Kuroda Junya
  • 雑誌名: Blood Advances 巻: 6 ページ: 1932～1936
  • DOI: 10.1182/bloodadvances.2021005876
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Pretreatment serum level of interleukin-6 predicts carfilzomib-induced hypertension in relapsed/refractory multiple myeloma (2022)
  • 著者名/発表者名: Muramatsu A, Kobayashi T, Kawaji-Kanayama T, Uchiyama H, Sasaki N, Uoshima N, Nakao M, Takahashi R, Shimura K, Kaneko H, Kiyota M, Wada K, Chinen Y, Hirakawa K, Fuchida S, Shimazaki C, Mizutani S, Tsukamoto T, Shimura Y, Taniwaki M, Teramukai S, Kuroda J
  • 雑誌名: Leukemia & Lymphoma 巻: 63 ページ: 1678～1685
  • DOI: 10.1080/10428194.2022.2038373
  • 査読あり
• [雑誌論文] The Rationale for the Dual-Targeting Therapy for RSK2 and AKT in Multiple Myeloma (2022)
  • 著者名/発表者名: Isa Reiko, Horinaka Mano, Tsukamoto Taku, Mizuhara Kentaro, Fujibayashi Yuto, Taminishi-Katsuragawa Yoko, Okamoto Haruya, Yasuda Shusuke, Kawaji-Kanayama Yuka, Matsumura-Kimoto Yayoi, Mizutani Shinsuke, Shimura Yuji, Taniwaki Masafumi, Sakai Toshiyuki, Kuroda Junya
  • 雑誌名: International Journal of Molecular Sciences 巻: 23 ページ: 2919～2919
  • DOI: 10.3390/ijms23062919
  • 査読あり
• [雑誌論文] Ciltacabtagene autoleucel in patients with relapsed/refractory multiple myeloma: <scp>CARTITUDE</scp> ‐1 (phase 2) Japanese cohort (2022)
  • 著者名/発表者名: Ri Masaki, Suzuki Kenshi, Ishida Tadao, Kuroda Junya, Tsukamoto Taku, Teshima Takanori, Goto Hideki, Jackson Carolyn C., Sun Huabin, Pacaud Lida, Fujikawa Ei, Yeh Tzu‐Min, Hatayama Tomoyoshi, Aida Kensuke, Sunagawa Yoshihiro, Iida Shinsuke
  • 雑誌名: Cancer Science 巻: 113 ページ: 4267～4276
  • DOI: 10.1111/cas.15556
  • 査読あり
• [雑誌論文] Watchful waiting is an acceptable treatment option for asymptomatic primary ocular adnexal mucosa‐associated lymphoid tissue lymphoma: A retrospective study (2022)
  • 著者名/発表者名: Mizuhara Kentaro, Kobayashi Tsutomu, Nakao Mitsushige, Takahashi Ryoichi, Kaneko Hiroto, Shimura Kazuho, Hirakawa Koichi, Uoshima Nobuhiko, Wada Katsuya, Kawata Eri, Isa Reiko, Fujino Takahiro, Tsukamoto Taku, Mizutani Shinsuke, Shimura Yuji, Yoneda Akiko, Watanabe Akihide, Sotozono Chie, Kuroda Junya
  • 雑誌名: Cancer Medicine 巻: 12 ページ: 3134～3144
  • DOI: 10.1002/cam4.5237
  • 査読あり