研究実績の概要 |
D抗原の発現は赤血球の形態維持に関与しており、D抗原関連分子群が正常に働かなくなると赤血球は正常な形態を保てなくなる。これまでに、D抗原の発現制御に重要なのは、Rhファミリー分子およびその他の相互作用分子との膜蛋白複合体形成と、スプライシング制御であることが判明している。 本研究はRhD抗原の発現制御メカニズムをこれら相互作用分子とスプライシング制御機構に着目して検討、その分子間ネットワークを明らかにすることを目的とする。 まず、相互作用分子の機能解析を目的に、RhDの既知の相互作用分子、候補分子について蛋白・蛋白間相互作用が具体的にどの蛋白間で起きているのか検討した。これまでにAnkyrin1, RhAGは直接相互作用するキー分子ではないことがわかった。次にRhDの各アイソフォームを組み込んだN末端GFP, Myc, HA, Flag-tag付の強制発現ベクターと、相互作用分子とし球状赤血球症原因遺伝子として知られるspectrinA, spectrinB, band3を選択し、これらに GFP, Myc, HA, Flag-tagを付けた全長・各機能ドメイン の強制発現ベクターを様々な組み合わせで293細胞へ同時導入、免疫沈降を行った。その結果spectrinA, spectrinBの相互作用候補分子ではRhD蛋白との特異的な共沈を認めなかった。band3は抗GFP抗体結合アガロースゲルで免疫沈降し、抗Myc抗体で検出したところ、バンドが確認されたため、band3はRhDに直接結合していることがわかった。これを確認するためにCheckMate system を用いてBand3と全長RhDの細胞内での結合をluciferase reporter assayで確認、ついでRhDの蛋白を短くして結合部位の確認を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
RhDの正常C末端のドメインをベイトにし、市販のユニバーサルヒトライブラリを用いたツーハイブリッドアッセイ、ヒト血液由来mRNAから作成したファージディスプレイライブラリを用いたbiopanningを行い、新規相互作用分子の候補を得る。得られた候補分子配列を哺乳類細胞の強制発現ベクター挿入し、293にRhD発現系と同時導入、免疫沈降法にて結合を確認する。とくにin silico 解析で膜蛋白と考えられる結合分子については、K562にRhDと同時導入、正常D抗原発現細胞モデルの作成を試みる。 我々が開発したスプライシングアッセイ用のdual-reporter system を用い、p63のエクソン12とエクソン14の間に検索対象RhDエクソンを含む1 kb 程度の短い配列のみ挿入して選択的スプライシングの制御を解析する。site directed PCR mutagenesis でcloning vector上で欠失や点変異を導入、これをdual-reporter付きのカセットベクターに乗せ換え、293に一過性に導入したさいのスプライシングパターンを評価してESE配列を同定、さらにESEに直接結合するSRSFその他のRNA結合分子を同定する。 得られたRhDのエクソン7, 8, 9 のESEを含むビオチン化RNA probe をアビジンコートプレートに固定、ヒト血液由来mRNAから作成したファージディスプレイライブラリと結合させるbiopanning の手法で、結合分子の候補を得る。得られた候補分子リストから局在や機能モチーフのin silico 解析でRNA結合蛋白の候補を絞り込む。確認が得られた分子についてはK562を用いたノックダウン細胞(レンチウィルスRNAi)を作成、赤芽球分化を誘導して実際の内在性RhDのスプライシングに影響を及ぼすか確認する。
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