研究課題
前年度で用いた肝臓GVHDのマウスモデル(ドナーにB6マウス、レシピエントにBDF1マウスを用いたMHC半合致骨髄移植モデル)を用いて、肝臓GVHD発症時に浸潤する細胞群が及ぼす影響について検討した。まず、肝臓に浸潤しているドナー細胞の炎症性サイトカイン産生を定量PCRを用いて評価したところ、腸管GVHDで上昇することが知られているインターフェロンγや腫瘍壊死因子αに加えて、肝臓ではトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)が特異的に上昇していることが明らかになった。さらに免疫染色とフローサイトメトリー解析を用いて、TGFβ産生細胞が肝臓GVHD時に浸潤している炎症性マクロファージであることが明らかとなった。肝臓GVHDではこの炎症性マクロファージが産生するTGFβを介して、胆管上皮細胞が傷害されることで、肝臓が障害されてビリルビンや胆管障害マーカーであるマトリックスメタロプロテアーゼ7が上昇して、肝臓GVHDの病態が形成されることが示唆された。腸管GVHDにおいては腸内細菌叢の乱れの存在が病態形成に重要な役割を果たしているが、腸管と肝臓は胆管/胆汁酸を介して双方向ネットワークを形成していることから、腸管GVHDにおける腸内細菌叢の乱れが肝臓GVHDの病態形成に何らかの影響を及ぼす可能性がある。そこで、両者の関係を明らかにすべく、まず通常は無菌状態にある肝臓でGVHD発症時に細菌浸潤が生じているかを免疫染色を用いて検討した。すると肝臓GVHDの病態形成期であるDay21-35にかけて、GVHD発症群ではGVHD非発症群に比して、有意に門脈域へ細菌浸潤が生じており、肝臓GVHD発症における腸内細菌叢の影響が示唆された。
3: やや遅れている
肝臓GVHDにおける炎症性マクロファージの病的意義について明らかとなったが、現時点では炎症性マクロファージの肝臓への集積する原因については明らかとなっていない。また、肝臓GVHDでは本来無菌状態にある肝臓に細菌の浸潤(特に門脈域)が明らかとなったが、これが経胆道的なのか、経門脈的なのかは明らかになっていない。胆汁中の細菌量/細菌叢について検討したいと考えているが細菌量を測定しうるだけの十分な胆汁の採取方法が現時点では確立できておらず、まだ実施できていない。以上を踏まえて全体としてはやや遅れていると考える。
肝臓への細菌浸潤については免疫染色の画像処理やPCRを用いた定量化を試みる。さらに十分なDNA量が確保できるのであれば、胆汁や腸管内容物と共に細菌叢の解析を行い両者の関連性を評価してGVHDにおける腸管と肝臓のクロストークがあるのかを評価する。
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臨床血液
巻: 63 ページ: 1261-1269
10.11406/rinketsu.63.1261
Proceedings of the National Academy of Sciences
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10.1073/pnas.2211230119