クロマチンリモデリング関連遺伝子であるINO80C遺伝子に関しては現在までin vitroのノックダウン細胞株を用いた実験を進めており、急性骨髄性白血病細胞株においては骨髄系マーカーの陽性率が上昇することを観察した。この結果からは当該のクロマチンリモデリング因子が分化に関連していることが示唆された。一部また関連して別のクロマチン関連遺伝子として代表的なコヒーシン関連遺伝子であるStag2遺伝子のノックアウトマウスを用いた実験についても並行して開始した。胎児肝細胞を移植し たStag2ノックアウトマウスは末梢血が骨髄系への分化傾向を示すことを確認し、また骨髄細胞も野生型とは異なる表現型を示すことを確認している。もともと コヒーシン関連遺伝子は骨髄異形成症候群などをはじめとした骨髄系腫瘍で変異が多く観察されることが知られている。それに加えて所属研究室で所有するポリ コーム複合体関連遺伝子であるEzh2遺伝子のノックアウトマウスを用いて同様の実験を行った。表現型はStag2ノックアウトマウスの場合とはやや異なるもの の、RNAシークエンスでは造血幹細胞・前駆細胞の遺伝子発現変化に共通のパターンがみられ、ATACシークエンスではオープンクロマチン領域に共通する領域が認められた。分化関連の遺伝子発現変化や、細胞周期に関連する変化が顕著にみられたが、そのほか様々な制御機構に関わる分子の変化もみられている。これらの遺伝子変異が骨髄系腫瘍の病態変化に直接関わるような変化を同定するため、ChIPシークエンスも追加で行い、Stag2ノックアウトとEzh2ノックアウトではH3K27me3を減弱させるような影響がある可能性が示唆された。詳細なメカニズムに関しては不明であるため現在追加で解析を行っている。
|