研究課題/領域番号 |
21K16267
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
城 友泰 京都大学, 医学研究科, 助教 (20894348)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 悪性リンパ腫 / マウスモデル |
研究実績の概要 |
ワルデンストレームマクログロブリン血症/リンパ形質細胞性リンパ腫(WM/LPL)では、Toll-like受容体アダプター分子MyD88の活性型変異とケモカイン受容体CXCR4活性型変異を高頻度に認める。既に樹立済みのB細胞特異的MyD88活性型変異マウスに新たにCXCR4活性型変異を組み合わせることで、ヒトのWM/LPLを模倣するモデルマウスの樹立してWM/LPLの病態を解明を目指している。CXCR4はリガンドSDF1aの結合により下流シグナルが活性化するとともに、CXCR4が細胞内移行を生じることでシグナルが終了する仕組みとなっているが、CXCR4活性型変異であるWHIM様異常が存在するとCXCR4の細胞内移行が生じず、シグナルが恒常的に活性化し、WM/LPLの病態促進や治療抵抗性をもたらすと推測されている。 B細胞特異的CXCR4活性型変異マウス作出に先立って、マウス作製に用いる予定のコンストラクトについてタグ配列とリポーターの妥当性を評価するとともに、B細胞株においてCXCR4活性型変異発現がシグナル伝達に与える影響を評価する目的で、レンチウイルス発現系を用いてヒトB細胞リンパ腫由来細胞株とマウスB細胞リンパ腫由来細胞株に野生型CXCR4およびCXCR4活性型変異であるCXCR4 WHIM様変異体を強制発現させた。Flow cytometryを用いて細胞表面のCXCR4発現レベルを評価すると、野生型CXCR4発現細胞ではCXCR4リガンドであるSDF1a刺激により、細胞表面のCXCR4発現が減弱したことから、リガンド刺激依存的なCXCR4の細胞移行が示唆された。一方でCXCR4 WHIM様変異体を発現させた細胞ではSDF1a刺激でも細胞表面のCXCR4発現の減弱は認めず、変異により細胞内移行が障害されていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス作製に用いるコンストラクトについて、CXCR4のcDNA本体に付与するタグの種類と位置について再評価することとして、細胞株で検討を行った。用いたヒトおよびマウスBリンパ腫由来細胞株はいずれもレンチウイルス感染効率が低く、感染実験の条件検討に時間を要したため、主テーマの研究にはやや遅滞を生じている。しかし検討の結果、タグの種類と付与位置については決定することができ、マウス作製にすすめる準備は整っている。また主テーマから派生した研究に並行して着手し、有意義に実験を進められるよう工夫している。
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今後の研究の推進方策 |
B細胞株でCXCR4 WHIM様変異が細胞内シグナルに与える影響を評価し、同じコンストラクトを用いてB細胞特異的にCXCR4活性型変異を発現するマウス作製と表現解析を予定している。 また樹立したCXCR4様変異B細胞株を用いて、各種の抗がん薬や、BTK阻害薬やCXCR4阻害薬、BCL2阻害薬、IRAK阻害薬などのシグナル阻害薬に対する感受性に関する変異の影響を評価し、薬剤耐性克服に向けた併用療法、さらに新規治療薬シーズの探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたマウスの作製に関わる実験を次年度に行うこととしたため、次年度に繰り越して使用を予定している。
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