研究課題/領域番号 |
21K16279
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
鈴木 康裕 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター), その他部局等, 医師 (90898016)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | クローン解析 / NGS / PD-L1 / Hodgkin/Reed-Sternberg細胞 / FISH |
研究実績の概要 |
古典的ホジキンリンパ腫(cHL)は腫瘍細胞であるHodgkin/Reed-Sternberg(HRS細胞)の割合が少ないこともあり、その遺伝子解析は他の造血器腫瘍に比べても遅れており、腫瘍の発症や進展のメカニズムはまだ十分には明らかにはされていない。我々は、クローンが同一であり共通のPD-L1変異をもつと考えられた同時期発症のcomposite lymphoma(cHLとNK/T細胞リンパ腫)を経験した。本研究は、この症例をホジキンリンパ腫発症モデルとして、両腫瘍のクローンの関連性を追跡することにより、HRS細胞の腫瘍の起源ならびに進展の分子遺伝学的メカニズムを明らかにすることを目的とした。 cHLとNK/T細胞リンパ腫症例の病理学的検討を進めたところ、いずれもPAX5は陰性であったがBOB1・OCT2が陽性であり、その起源はB細胞由来と考えられた。NK/T細胞リンパ腫と考えられた症例は胸水・心嚢水のみにみられたことよりPEL-like lymphomaと診断された。レーザーマイクロダイセクションによるHL単一細胞由来のDNA解析を試みたが、NGS解析にふさわしいDNAの質と量が得られなかった。そのため、これまでのPEL-like lymphoma検体でのNGS解析結果をふまえ、FISH法によるアプローチに変更したところ、cHLとPEL-like lymphoma両病変の腫瘍細胞にPD-L1の増幅とPD-L1 3’側の遺伝子領域の欠失の両異常が確認された。本症例では縦隔リンパ節と胸水・心嚢水は異なる病理診断であったが、詳細な病理学的・分子遺伝学的検討にて両病変は同一クローン由来であり、cHLの腫瘍細胞からPEL-like lymphomaへクローン進展した可能性が示唆され、EBV感染がクローン進展の一つのメカニズムと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初NK/T細胞リンパ腫と考えられた胸水病変が詳細な病理学的検討にてB細胞系統であることが分かった。また、FFPE検体からレーザーマイクロダイセクションによるホジキンリンパ腫単一細胞由来のDNA解析を試みたが、NGS解析にふさわしいDNAの質と量が得られなかった。検体量など考慮してFISH法による解析をすすめる方針としたところ、cHLとPEL-like lymphoma の両病変においてそれぞれの腫瘍細胞において、PD-L1の増幅のみならず、PD-L1 3’側の遺伝子領域の欠失を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、HRS細胞の腫瘍の起源ならびに進展の分子遺伝学的メカニズムをさらに明らかにするため、今回のクローン進展の検討を別症例でも予定し、バーキットリンパ腫の経過中にホジキンリンパ腫に進展した症例や、濾胞性リンパ腫とホジキンリンパ腫を同時期に別部位に認めた症例など非典型的な症例についての詳細な検討を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は研究室で予め購入済みの試薬類を使用することで研究の遂行が可能であった面もあり次年度使用額が生じた。今後さらに症例を増やして解析を予定しており、繰り越し分をあわせて今後研究予定の試薬やシーケンス費用に充当する予定としている。
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