研究課題
古典的ホジキンリンパ腫(cHL)は腫瘍細胞であるHodgkin/Reed-Sternberg(HRS)細胞の割合が少ないこともあり、その遺伝子解析は他の造血器腫瘍に比べても遅れており、腫瘍の発症や進展のメカニズムはまだ十分には明らかにはされていない。我々は、クローンが同一であり共通のPD-L1変異をもつと考えられた同時期発症のcomposite lymphoma(cHLとPEL-like lymphoma)の症例を経験し、ゲノム解析の結果、クローンが同一であることおよび共通のPD-L1変異をもつことを明らかにした。本研究は、この症例をホジキンリンパ腫発症モデルとして、両腫瘍のクローンの関連性を追跡することにより、HRS細胞の腫瘍の起源ならびに進展の分子遺伝学的メカニズムを明らかにすることを目的とした。詳細な病理学的検討ならびにNGS、FISHによる分子遺伝学的検討にて、cHLとPEL-like lymphoma両病変の腫瘍細胞にPD-L1の増幅とPD-L1 3’側の遺伝子領域の欠失の両異常が確認された。両病変は同一クローン由来であり、EBVがクローン進展の一つのメカニズムと考えられた。また、cHLと濾胞性リンパ腫(FL)を同時期に同一個体内に認めた症例も経験し、両腫瘍のクローンの関連性を追跡したところ、両腫瘍は同一の遺伝子再構成とIgH-BCL2転座を有し、PD-L1異常ではなくBCL2異常が関連するcHLと考えられた。同時期発症のcomposite lymphomaを詳細に病理学的、分子遺伝学的に検討することで、cHLのクローン進展の一部が明らかになった。
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