全身性エリテマトーデス(SLE)は若年女性に発症する自己免疫性疾患で様々な臓器病変を伴い生命予後も悪い。SLE患者の20~40%に精神神経ループス(NPSLE)が認められ、意識障害やてんかんなどを呈する。NPSLEはSLE患者の予後規定因子のひとつとされているが、病態は不明で、エビデンスのある治療戦略が立てられないのが現状である。ステロイド投与後にNPSLEを発症する例や、他の臓器病変を伴わない例も多く、NPSLEの病態にあった新規治療が求められている。これまでに我々はNPSLEモデルマウスを用いて、ミクログリアの活性化がNPSLEの行動異常に関与していることを示してきた。本研究ではNPSLEにおけるミクログリアの病態関与ならびに新規治療ターゲットを見いだすことを目的とする。 まず、健常者ならびにNPSLE患者の末梢血単核球からiPS細胞を樹立した。ミクログリアへの分化、解析を進めている。またNPSLEモデルマウスであるMRL/lprマウスとそのコントロールマウスであるMRL/MpJマウスの脳からミクログリアを分離し、遺伝子発現の変化をRNAseqで網羅的に検討したところ、NFκBを活性化させるinhibitor of nuclear factor kappa B kinase subunit epsilon (IKBKE)を含む複数のターゲットが見いだされた。IKBKEや遺伝子Yの阻害薬によるミクログリアの活性化ならびにNPSLEモデルマウスへの髄腔内持続静注による行動異常の改善が確認された。また解糖系の阻害により、ミクログリアの活性化が抑制されることも明らかとなった。これらにより、NPSLEの新規治療ターゲットが明らかとなった。
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