研究課題/領域番号 |
21K16281
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
岩本 太郎 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (80835083)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 全身性エリテマトーデス / Ⅰ型インターフェロン / ループス腎炎 / B細胞 |
研究実績の概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)は、難治性の全身性自己免疫疾患である。SLEの病態形成にはI型インターフェロン(IFN)が深く関与していることが示唆されている。IFN は様々な免疫細胞に作用するが、特にnaive B細胞を自己抗体産生 B 細胞に分化させ、トレランスの破綻に関与することでSLEの発症に寄与していると考えられている。本申請研究では、SLEにおける自己抗体産生及び、重症な臓器病変であるループス腎炎(LN)の発症・病態形成におけるIFN の役割の解明を目指す。我々がこれまでに行った少人数の横断的研究では、IFNが日本人SLEで上昇し、病勢活動指標と相関することを示したが、LNの有無と治療前IFNの発現量には有意な相関は認めなかった。本年度は、追加解析により、治療前IFN発現量が高い群ではその後の臓器障害の蓄積が大きいことがわかった。また、SLEにおけるIFNや自己抗体プロファイルは人種間で大きく異なることが知られているが、日本人SLE患者でもIFNとB細胞活性化因子(BAFF)が正の相関を示し、日本人SLEにおいてもIFNによりB細胞が大きく活性化している可能性が示唆された。現在、自己抗体プロファイルとIFNとの関連も解析中である。またB細胞サブクラスの詳細なプロファイルに関しても、構築中の前向きコホートの検体からフローサイトメトリーでの解析をセットアップ中である。今後は引き続きSLEのコホートを構築しつつ、SLEの病態形成におけるIFNの役割ならびにB細胞プロファイルの詳細な解析を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、追加解析により、日本人SLE患者では治療前IFN発現量が高い群ではその後の臓器障害の蓄積が大きいことがわかった。また、IFNとBAFFが正の相関を示し、日本人SLEにおいてもIFNによりB細胞が大きく活性化している可能性が示唆された。自己抗体プロファイルとIFNとの関連なども解析中である。またB細胞サブクラスの詳細なプロファイルに関しても、構築中の前向きコホートの検体を用いてフローサイトメトリーでの解析をセットアップ中である。SLEにおけるIFNの発現量は人種ごとに大きく異なり、SLEの重症度等にも影響するため、日本人SLEにおいて、IFNがB細胞の活性化に重要な役割を果たしている証左を得られたことは、本研究の推進において大きな意味を持った。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、IFNの発現量とBAFFの発現量が正の相関関係にあることを示し、日本人のSLE病態において自然免疫と獲得免疫が連関している証左を得ることができた。また、治療前IFNが高い群ではその後の臓器障害の蓄積が大きいことが判明し、SLEの予後予測因子としてのIFNの役割についても確認することができた。引き続きSLEのコホートを構築しつつ、SLEの病態形成におけるIFNの役割ならびにB細胞プロファイルの詳細な解析を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、予定していたB細胞サブクラスの解析が検体採取スケジュールの関係で行えず、377,884円の次年度 使用額が発生した。これらは来年度分で行う当該実験の費用に当てる予定である。
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