研究課題/領域番号 |
21K16284
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮川 卓也 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60843323)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 全身性強皮症 / 脂肪細胞 / アディポカイン |
研究実績の概要 |
全身性強皮症の病態に関与が示唆されるも詳細が分かっていないアディポカインの病態解析を行うため、全身性強皮症様の線維化と血管障害を自然発症する脂肪細胞特異的Fli1欠損マウス(Fli1 AdipoKOマウス)より脂肪細胞を単離して、アディポカインの発現パターンをコントロールマウスと比較した。12週齢のFli1 AdipoKOマウスならびにコントロールマウスの精巣周囲の脂肪を摘出後ミンスし、コラゲナーゼ処理後、ろ過、遠心を行い、脂肪細胞を回収した。コラゲナーゼ処理の時間や遠心する時間など細かく条件をかえ、一番よい純度の脂肪細胞に関してシーケンサーを用いて網羅的に解析し、昨年と同様、再度検討を行った。これまでに全身性強皮症と関連があると言われていたアディポネクチン、ビスファチン、レジスチン、リポカリン2、オメンチンなどのアディポカインに関してはFli1 AdipoKOマウスとコントロールマウスに関して有意差は見られなかったものの、同じく関連があると言われていたIL-6に関してはFli1 AdipoKOマウス脂肪細胞で上昇している傾向が見られた。また皮下脂肪が付着した皮膚組織で免疫組織学的検討を行うことで、Fli1 AdipoKOマウスの脂肪細胞ではIL-6が有意に上昇していることを確認した。Fli1 AdipoKOマウスでは、骨髄内脂肪細胞が骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSCs)に作用し未熟な周皮細胞を形成することで血管障害を起こしていることが示唆されている。in vitroでIL-6のsiRNAをFli1 AdipoKOマウスのBM-MSCsに添加しBM-MSCsのフェノタイプがコントロールマウスと同等になることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年同様、脂肪細胞単離において思ったような純度が得られず、また脂肪細胞の量に関しても、シーケンサーを使った網羅的な解析を行うためにはマウス4-5匹分の皮下脂肪や精巣周囲脂肪が必要であった。純度を高めるためにプロトコルの条件設定を少しずつ変更して何度も試行錯誤したこと、また十分なマウスの数を得るのに時間がかかった点などを合わせて、予定より遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
12週齢のFli1 AdipoKOマウスならびにコントロールマウスの精巣周囲の脂肪細胞における検討では、有意差が見られ、かつこれまで全身性強皮症との関連が指摘されているものとして、IL-6が候補に挙がった。IL-6ならびに時間的に余裕があれば全身性強皮症と関連がこれまで指摘されていない有意差のあるアディポカインに関して以下の検討を行う。Fli1 AdipoKOマウスでは、皮下脂肪組織が形質転換を起こし筋線維芽細胞になることで線維化を、骨髄内脂肪細胞がBM-MSCsに作用し未熟な周皮細胞を形成することで血管障害を起こしていることが示唆されている。脂肪細胞が分泌するアディポカインに関して、上昇している因子に関しては、in vitroでアディポカインのsiRNAをBM-MSCsに添加しBM-MSCsのフェノタイプの変化を確認する(IL-6に関しては既に施行済み)とともに、培養脂肪細胞にも添加し筋線維芽細胞への形質転換の有無を確認する。さらにin vivoにて、存在するものでは中和抗体を投与し、Fli1 AdipoKOマウスにおける線維化や血管障害などの改善が見られるかどうかを確認することで、アディポカインの病態への寄与をさらに細かく検討を行う。低下している因子に関しては、in vitroおよびin vivoでリコンビナントタンパクを投与し、同様に病態への寄与を検討する。また全身性強皮症患者の脂肪細胞でも同様の所見が見られるかを皮下脂肪が付着した皮膚組織で免疫組織学的検討を行うことや、脂肪細胞を単離してRNAシーケンスやマイクロアレイを用いて発現量を比較することで確かめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行に関して予定より遅れており、行いたい実験までたどり着けておらず、次年度使用額が発生した。研究期間の延長を申請し、次年度での使用を検討させていただいている。今後は【今後の研究の推進方策】で記載した内容を行う予定であり、その実験にかかる費用に使用させていただく予定。
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