本研究は全身性エリテマトーデス(SLE)に関わるHLAクラスII分子の機能を解析し、抗DNA抗体の産生機序を解明することを目的とする。そのため、①HLAクラスII分子によるDNAの提示能の解析、②HLAクラスII分子によって提示されるDNAによるDNA応答性B細胞受容体(BCR)刺激実験、③マウスを用いたDNA/HLAクラスII分子複合体による抗DNA抗体産生実験を計画した。HLAクラスII分子(HLA-DR15)発現細胞とゲノムDNAと共培養したところ、細胞表面のHLA-DR15とDNAの結合が確認された。B16F10細胞でのIFN-刺激下で細胞表面に発現させた内在性のMHCクラスII(H-2b)分子とDNAの結合も確認された。Biotin化DNAをHLAクラスII発現細胞と共培養したlysateをstreptavidinで沈降しWestern-blotしたところ、DNAとHLA-DR15の結合が確認された。さらに、HLA-DR15のペプチド結合溝に特異的に結合するSP3ペプチドを用いたところ、DNAのHLAクラスII分子への結合が競合阻害され、HLAクラスII分子へのDNAの特異性が検証された。HLAクラスII分子各アリルとDNAの結合能がSLEの疾患感受性と関連するかを検討したところ、両者の間に相関がみとめられた。DNA応答性BCR発現レポーター細胞を作成した。その細胞を用いて実験②のHLAクラスII分子によって提示されるDNAによるDNA応答性BCR刺激実験を行い、B細胞の活性化が確認された。③マウスを用いたDNA/HLAクラスII分子複合体の免疫による抗DNA抗体産生実験を試みたが、腎炎の発症や抗DNA抗体産生は認められなかった。
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