研究課題/領域番号 |
21K16291
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
酒井 亮太 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (80727529)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 半月体形成性糸球体腎炎 / 制御性T細胞 / GATA3 / LacZ / IL-33 |
研究実績の概要 |
本研究では腎炎回復期に出現するGATA3陽性組織制御性T細胞(Treg)がどのように寛容維持に寄与し、過剰な線維化を抑制するのかを明らかにして、腎炎の炎症収束・組織修復および再生機構を解明し、慢性腎不全を防ぐ治療応用を目的とすることから、まずはGATA3陽性Tregの特徴の把握を目指した。 GATA3陽性Tregを解析するには同細胞を生細胞のまま生体組織から遊離する必要があり、共同研究者が開発したGATA3の遺伝子座にLacZを組み込んだTg(GATA3-lacZ)(C57BL6♀×DBA2♂の交雑種であるBDF1背景)を使用することにした。このマウスは大腸菌由来のβ-galactosidase遺伝子(lacZ)を発現することでGATA3陽性細胞を標識できる。また、別の共同研究者から、Foxp3-IRES-hCD2-CD52ノックインマウス(C57BL6背景)をすでに入手しており、数世代で戻し交配を行い、蛍光試薬SPiDER-βGal(株式会社同仁化学研究所)を用いることでGATA3陽性Tregを生細胞のまま、1細胞レベルで解析する予定である。 また、in vitroの実験系においてGATA3陽性Tregの生存に最も寄与する因子について検討した。一般的にTregはTCR刺激(antiCD3/28)及びIL-2の刺激が生存に必須とされ、IL-33/Areg/ PPARγアゴニストの刺激と組み合わせて条件検討したところ、GATA3の発現にはIL-2/IL-33刺激が最も重要であり、TCR刺激を加えたものは逆にGATA3の発現が抑制された。腎炎回復期におけるGATA3陽性Tregの生存にTCR刺激は必須ではなく、IL-2/IL-33の作用がより重要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究ではGATA3陽性Tregを生細胞のまま分離し、RNA-seq解析を行うことでGATA3陽性Tregの機能発現に重要な遺伝子の同定を試みた。当初、GATA3の遺伝子座にGFPを組み込んだトランスジェニックマウスTg(GATA3-EGFP)とFoxp3-IRES-hCD2-CD52ノックインマウス(C57BL6背景)(いずれも共同研究として入手)を交配予定であったが、Tg(GATA3-EGFP)マウスがICR背景であることから、C57BL6への戻し交配に時間を要すると判断し、共同研究者が開発したGATA3の遺伝子座にLacZを組み込んだTg(GATA3-lacZ)(C57BL6♀×DBA2♂の交雑種であるBDF1背景)を使用することにした。この際、マウス搬入の検疫期間の設定や手続きに想定以上の時間を要した。また、入手したTg(GATA3-lacZ)はC57BL6の交雑種のBDF1背景であったものの、3-4世代の戻し交配を要した。現在、戻し交配した4世代目の確保ができている。また、蛍光試薬SPiDER-βGalを用いたフローサイトメトリー解析ではGATA3陽性Tregを明瞭に分離するために様々な条件検討を要した。マウス組織を用いた免疫組織学的な検討においてもGATA3陽性Tregの局在の把握をするために様々な条件検討を要した。予定では初年度にGATA3陽性TregのRNA-seq解析を行い、機能発現に重要な遺伝子を明らかにすることを想定していたが、まだ解析を行っていない。以上の理由から計画はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度として生細胞のまま分離したGATA3陽性Tregのソーティングを試み、bulkもしくはsingle cell RNA-seq解析を行い、GATA3陽性Tregの機能発現に重要な遺伝子の同定を試みる。この遺伝子について、脾臓やリンパ節から分離したhCD2-FoxP3を発現するTregをソーティングした後、Tregの細胞内で4D-Nucleofector装置を用いたゲノム編集技術で欠損させ、CD45.1のコンジェニックマウスで標識したTconv(CD4+CD25-)と共にCd3ε欠損マウスに経静脈的に移入し、半月体形成性糸球体腎炎(cGN)を誘導し、その後の免疫学的・生理学的な病態変化を観察することで、組織Tregの効果発現にどのような変化をもたらすのか、明らかにすることを目標としている。 また、cGNを誘導した腎組織から分離して得られたGATA3陽性Tregと腎固有細胞(線維芽細胞、血管内皮細胞、足細胞)を分離・共培養し、腎固有細胞内に存在する蛋白質・遺伝子発現の変化や免疫組織染色等の病理組織学的解析を行い、腎臓線維化の促進あるいは抑制に寄与する細胞やタンパク質などの寄与因子の同定を試み、GATA3陽性Tregが腎臓線維化を制御する機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に遂行予定であったRNA-seq解析を実施する費用の一部として計上する予定である。
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