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2022 年度 実施状況報告書

半月体形成性糸球体腎炎におけるGATA3陽性Tregと腎固有細胞とのクロストーク

研究課題

研究課題/領域番号 21K16291
研究機関埼玉医科大学

研究代表者

酒井 亮太  埼玉医科大学, 医学部, 講師 (80727529)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード半月体形成性糸球体腎炎 / 組織制御性T細胞 / GATA3 / IL-33 / IL-2 / TCR
研究実績の概要

腎炎回復期に出現するGATA3陽性組織制御性T細胞(Treg)の特徴の把握するために蛍光試薬SPiDER-βGal(株式会社同仁化学研究所)を用いて、1細胞レベルでの解析を目指した。しかし、フローサイトメトリー解析ではConventional T細胞でGATA3陽性のうち、β-galactosidase陽性細胞は約60%に、さらにGATA3陽性Tregのうちβ-galactosidase陽性細胞は約10-20%にとどまった。また組織解析でも自家蛍光との区別が困難で、明確にGATA3陽性Tregを区別できないと判断した。従って、GATA3陽性Tregのbulkもしくはsingle cell RNA-seq解析は施行できなかった。
このため、まずin vitroでのGATA3陽性Tregの誘導を試みた。脾臓から単離したTregはCD3/CD28刺激なしでIL-2およびIL-33によりGATA3が強く発現することを明らかにした。Foxp3を発現しないConventional T細胞をIL-4およびIL-2のいわゆるTh2条件でTCR刺激をしたところ、TCR刺激を減らしていくと段階的にGATA3の発現は減少した一方で、TregにおいてはConventional T細胞の増殖に必要な程度のTCR刺激を加えたものは逆にGATA3の発現が抑制され、Foxp3を失ったexTregが増加した。しかし、TCR刺激を段階的に減らしていくとある程度の「強すぎないTCR刺激」ではexTregは増加せず、TCR刺激無しと比較してGATA3陽性Tregが増加することを明らかにした。
腎固有細胞としてHatje FA, et al. J Am Soc Nephrol. 2021に従い、メサンギウム細胞、血管内皮細胞、足細胞のソーティングし、発現遺伝子についてRT-PCRで確認した。各々細胞培養が可能となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

前年度までにGATA3- lacZトランスジェニックマウス(C57BL6♀×DBA2♂の交雑種であるBDF1背景)とFoxp3-IRES-hCD2-CD52ノックインマウス(C57BL6背景)をかけ合わせ、戻し交配したマウスを利用し、蛍光試薬SPiDER-βGal(株式会社同仁化学研究所)を用いることでGATA3陽性Tregを生細胞のまま解析するために様々な条件検討を繰り返した。しかしながら、フローサイトメトリー解析ではConventional T細胞でGATA3陽性染色のうち、β-galactosidase陽性細胞は約60%にとどまった。さらにGATA3陽性Tregのうちβ-galactosidase陽性細胞は約10-20%にとどまった。また組織解析でも自家蛍光との区別が困難であり、SPiDER-βGal染色では明確にGATA3陽性Tregを区別することは困難と判断した。しかし、腎臓の糸球体固有の細胞である、メサンギウム細胞、足細胞、血管内皮細胞の1細胞レベルでの解析手法はSony SH800を用いて抽出が可能になり、in vitroでの細胞培養が可能になった点は評価できる。そして、in vitroでのTCR刺激を用いた実験の結果、GATA3陽性Tregが通常の刺激ではなく、強すぎない刺激によって活性化される可能性があり、抗原提示細胞ではなく、MHCクラス分子を有する臓器固有の細胞によって刺激される仮説を得ることができたが、この証明には様々な条件検討が必要であること、当初のGATA3陽性Tregの遺伝子プロファイルの把握ができなかったことから、計画はやや遅れていると判断した。

今後の研究の推進方策

Tregは、免疫系の末梢寛容と組織の恒常性に重要な役割を果たすことが多数報告されている。しかし、この臓器特異的組織Tregがどのように免疫寛容を誘導し、組織修復に寄与するのか、未だ不明な点が多く、今後の解明が期待されていた。本研究では、臓器局所で免疫制御や組織修復に寄与するとされるTregにおけるGATA3発現に寄与する因子に焦点を当てることにした。Conventional T細胞と異なり、強すぎないTCR刺激とIL-2並びにIL-33がTregのおけるGATA3発現が組織局所において重要である可能性が指摘された。この「強すぎない刺激」がどの細胞から来るのか、特に臓器固有に存在するメサンギウム細胞や足細胞にはMHC分子を発現するため、これらの抗原提示能をもつ細胞に焦点を当てる。脾臓やリンパ節などの2次リンパ組織から抽出したTregとそれらの細胞との共培養システムでGATA3発現の強度を調べ、腎炎回復期に出現するGATA3陽性組織制御性T細胞(Treg)がどのように寛容維持に寄与し、過剰な線維化を抑制するのかを明らかにしたい。そして腎炎の炎症収束・組織修復および再生機構を解明し、慢性腎不全を防ぐ治療応用を目指したい。

次年度使用額が生じた理由

RNA-seq解析を施行できなかったため、予算に余剰が生じた。次年度にて実施予定の計画に使用予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Systematic review and meta-analysis for 2023 clinical practice guidelines of the Japan Research Committee of the Ministry of Health, Labour, and Welfare for Intractable Vasculitis for the management of ANCA-associated vasculitis2022

    • 著者名/発表者名
      Watanabe Ryu, Oshima Megumi, Nishioka Norihiro, Sada Ken-Ei, Nagasaka Kenji, Akiyama Mitsuhiro, Ando Taiki, Higuchi Tomoaki, Inoue Yoshino, Kida Takashi, Mutoh Tomoyuki, Nakabayashi Akihiko, Onishi Akira, Sakai Ryota, Waki Daisuke, Yamada Yosuke, Yajima Nobuyuki, Tamura Naoto, Kaname Shinya, Harigai Masayoshi
    • 雑誌名

      Modern Rheumatology

      巻: Epub ahead of print ページ: -

    • DOI

      10.1093/mr/roac114

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Concurrent Takayasu Arteritis and Vascular Ehlers-Danlos Syndrome: A Case Report2022

    • 著者名/発表者名
      Hashimoto Kyota, Sakai Ryota, Shibata Akiko, Okada Yusuke, Yoshinaga Syoichi, Kurasawa Takahiko, Kondo Tsuneo, Amano Koichi
    • 雑誌名

      Frontiers in Cardiovascular Medicine

      巻: 9 ページ: 805505

    • DOI

      10.3389/fcvm.2022.805505

    • 査読あり
  • [学会発表] AI(人工知能)で迫る、顔認識による膠原病疾患の新たな診断補助ツールの開発2023

    • 著者名/発表者名
      4.酒井亮太、吉永正一、岡田悠介、柴田明子、倉沢隆彦、近藤恒夫、天野宏一
    • 学会等名
      第67回日本リウマチ学会総会・学術集会
  • [学会発表] ループス腎炎に対するシクロホスファミド・タクロリムス併用療法の有用性と安全性2022

    • 著者名/発表者名
      酒井亮太、柴田明子、岡田悠介、吉永正一、斎藤俊太郎、倉沢隆彦、近藤恒夫、天野宏一
    • 学会等名
      第66回日本リウマチ学会総会・学術集会
  • [学会発表] The survival factors of GATA3+ Tregs in the convalescence stage of glomerulonephritis2022

    • 著者名/発表者名
      Ryota Sakai, Mariko Toguchi, Koichi Amano
    • 学会等名
      第51回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] 腎炎回復期に出現するGATA3陽性Tregの生存に最も寄与する因子の検討2022

    • 著者名/発表者名
      酒井亮太、戸口真理子、天野宏一
    • 学会等名
      第50回日本臨床免疫学会総会

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公開日: 2023-12-25  

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