研究課題/領域番号 |
21K16296
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
大谷 一博 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (60801298)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / prokineticin 2 / IL-6 / コラーゲン誘導性関節炎 / ミクログリア / アストロサイト |
研究実績の概要 |
コラーゲン誘導性関節炎マウスの脳内におけるprokineticin関連因子,グリア細胞マーカー、炎症性サイトカイン発現をRT-PCR法を用いて時空間的に解析した.その結果、関節炎の急性期に広範な脳領域でIL1-β,DDIT4が一過性に発現していることが分かった.さらに特徴的であったのは、関節炎の発症前から,嗅球においてIL-6やITGAM(ミクログリアマーカー),NR3C1(グルココルチコイド受容体),prokineticin receptor 2(PKR2)の発現が誘導されていたことであった.特にIL-6は関節炎に伴う摂食量低下や体重減少と相関関係を認め,その発現は関節炎の慢性期においても持続していた.この現象は2型コラーゲンを投与せずにFreund Adjuvantのみを投与した群では観察されず,関節炎を含むある特定の末梢の免疫炎症病態に特徴的な変化と考えられた.一方で抗2型コラーゲン抗体誘導性関節炎モデルについても解析したが,誘導に用いるLPSの影響が大きく,LPS投与群との差異は認めなかったものの,嗅球におけるIL-6,prokineticin2(PK2)の上昇は確認された.嗅球の一部の細胞群でPKR2をノックアウトしたマウスでは嗅球におけるIL-6発現は抑制され,抗2型コラーゲン抗体誘導性関節炎の重症度の低下を示す他,LPSにより誘導される食欲低下や体重減少,低体温症に抵抗性を示すことが判明している.そのため、嗅球のPK2-PKR2シグナルと,IL6発現,末梢におけるアウトプットとの関係について次年度より解析予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関節炎モデルにおいては神経炎症の時空間的な解析を行い,早期から慢性期まで持続する嗅球における特徴的な遺伝子発現変化を見出した.一方でノックアウトマウスにおいても嗅球における変化を確認するとともにprokineticin receptor2ノックアウトマウスにおいてはその変化が減弱すること,末梢のアウトプットとしての関節炎,体重減少、摂食量低下,低体温症の減弱が確認できている.そのため進行状況としてはおおむね順調と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
嗅球のPK2-PKR2シグナルと,IL6発現,末梢におけるアウトプットとの関係についてノックアウトマウスの嗅球への介入実験を行い検討していく方針とする.また,倫理審査などを進めていき,関節リウマチ患者における嗅球の画像解析や,臨床兆候との関連,嗅覚異常の有無などを解析できるよう準備していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗コラーゲン抗体誘導性関節炎において、LPSによる影響が大きかったことから、コラーゲン誘導性関節炎マウスの解析に切り替えたことが主因である(4万円/匹→5000円/匹). また解析方法をRTPCR法に切り替えたことで既存の消耗品を用いることができたことも影響している.今後の使用計画は、当初の計画より一歩進んだ解析として,嗅球特異的介入を行う予定であり,その際のマウス購入費やモデル作製費に充てる予定である。
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