研究課題/領域番号 |
21K16302
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
川上 徹 信州大学, 医学部附属病院, 医員 (50867041)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胸腺腫 / 赤芽球癆 / STAT3 / T細胞受容体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、胸腺腫症例のT細胞の遺伝子変異プロファイルを網羅的遺伝子解析により明らかにし、胸腺腫および関連する自己免疫疾患の診療に有用な新規指標を確立することである。 先行研究においてCD4陽性細胞とCD8陽性細胞に分けて全エクソン解析を行い、結果を比較することでCD4陽性細胞、CD8陽性細胞それぞれに特徴的な遺伝子群を同定していたが、それに細胞シグナル伝達、細胞増殖、細胞周期といった機能に関連する遺伝子やT細胞性リンパ腫、クローン性造血などに重要な影響をもつと考えられる遺伝子等を加え、52遺伝子からなる遺伝子解析パネルを作成した。胸腺腫症例の末梢血単核球からDNAを抽出し、作成したパネルを用いてライブラリ化し、ターゲットシーケンスを行った。変異アリル頻度が高い遺伝子についてはダイレクトシーケンスで確認を行った。T細胞受容体(TCR)の再構成はBioMed2プロトコルにて、TCRのレパトア解析はフローサイトメトリーでそれぞれ調べた。 赤芽球を合併した胸腺腫の33%でTCRの再構成を認め、25%でTCRレパトアの偏りを認めた。胸腺腫を含む49症例でターゲットシーケンスを行い、遺伝子多型やエラーと考えられる変異の除去を行った結果、各症例ごとに中央値で3個の体細胞遺伝子変異を同定し、STAT3遺伝子を含む19遺伝子が複数症例で変異していた。STAT3変異については、以前の我々の研究と結果が一致し、解析方法の妥当性を確認した。今後は症例数を増やし、各病型ごとに遺伝子変異プロファイルを比較することで、各病型に特徴的な変異の様式を同定してくことを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ターゲットシーケンスの解析の妥当性は確認できており、症例の蓄積も進んでいる。臨床情報も順次収集しており、遺伝子変異プロファイルと病型や治療効果との比較も行える段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
症例をさらに蓄積し、解析を進める。遺伝子変異解析の結果と臨床情報との関連を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ターゲットシーケンスの試薬代が主な支出となるが、先行研究の試薬の余りを使用した分があり、予想支出との差額が発生した。検体の蓄積はすすんでおり、引き続きターゲットシーケンスは行っていく。順次試薬も購入していく予定である。
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