研究課題/領域番号 |
21K16304
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
藤井 渉 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (60755643)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | PF-ILD / 気管支肺胞洗浄液 / 好中球 / 肺胞マクロファージ / C1qマクロファージ |
研究実績の概要 |
全身性強皮症、関節リウマチ、多発性筋炎・皮膚筋炎などの膠原病ではしばしば間質性肺疾患を合併しCTD-ILDと呼ばれるが、その病因、分子病態について十分解明されているとは言い難い。また、間質性肺疾患の中で免疫抑制療法などの治療にも関わらず進行性の肺線維化により肺機能低下をきたす病態はPF-ILDと呼ばれており臨床上大きな問題となっているが、その病態には未だ不明な点が多く、早期診断のためのバイオマーカーも存在しない。本研究ではPF-ILDの特徴を満たすCTD-ILD患者気管支肺胞洗浄液(BALF)中の肺胞マクロファージをはじめとする免疫細胞をシングルセルRNA-seq(scRNA-seq)、マルチカラーフローサイトメトリー、ELISAなどにより統合的に解析し、進行性線維化に関わる因子を同定することを目的とし研究を行った。 2021年度はPF-ILDの基準(標準治療にも関わらず24ヶ月以内に10%以上の努力性肺活量の低下、または5%以上の努力性肺活量の低下かつ呼吸困難症状の悪化、または画像評価で肺線維化領域の拡大)を満たすCTD-ILD患者7症例、対照群としてnonPF-ILD15症例からBALF検体を採取し、scRNA-seqとフローサイトメトリー、ELISAによる解析を行なった。その結果PF-ILD患者BALF中では好中球及び補体成分の一つであるC5aが有意に上昇していることを見出した。またscRNA-seqを用いたBALF細胞の網羅的遺伝子発現解析により、肺胞マクロファージはその遺伝子発現パターンから単球由来マクロファージ、炎症性マクロファージ、増殖性マクロファージ、老化マクロファージ、C1qマクロファージなど様々な亜分類に分けることができ、PF-ILDではC1qマクロファージや老化マクロファージが増加していることが分かった。これらの治験はPF-ILDのバイオマーカーや新たな治療標的となり得る可能性があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標症例数の収集をほぼ完了し、うち半数の解析を完了した。残り半数の症例の収集と解析も現在進行中であるため「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
検体収集と解析を完了し、PF-ILDの病態解明を目指す。またscRNA-seqにより得られた知見を、臨床現場で応用可能な一般的な手法で同定可能なPF-ILDバイオマーカーの探索と、新たな治療標的候補分子の発見を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
多検体をまとめて処理、解析を行ったため、試薬、解析費用を予定より割安で実施できた。次年度以降にさらに収集した検体の処理および解析費用として予算を使用する予定である。
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