研究課題
身体全体を覆う皮膚には、水分保持や有害な微生物などの異物の侵入を防ぐ「バリア機能」があり、身体の恒常性維持に重要な役割を担っている。皮膚の水分量が低下するとドライスキンとなり、皮膚バリア機能が低下してアトピー性皮膚炎(AD)や乾癬といった皮膚炎発症に繋がる。一方、制御性T細胞(Treg)は免疫応答を負に制御する機能を持ち、自己免疫疾患や炎症性疾患、アレルギー疾患等を引き起こす過剰な免疫応答を抑制する役割を担っている。Tregの欠損や変異によって引き起こされるIPEX症候群では、しばしば重度の皮膚炎が認められることから、Tregが皮膚の恒常性維持に関与していることが示唆されている。しかしながら、その詳細なメカニズム及びTregと皮膚バリアとの関係性は不明である。そこで本研究は、ADを代表とする炎症性皮膚疾患の新規治療法及び予防法の開発を目指し、皮膚バリア破綻におけるTregの役割を解明することを目的として、皮膚バリア破綻モデルマウスの解析を行った。その結果、皮膚バリア破壊によってTregが真皮内に浸潤し、抑制性サイトカインを産生していることを見出した。また、Tregの浸潤には表皮角化細胞から放出されるIL-33が直接関与していることを発見した。以上の結果から、Tregは免疫抑制機能によって皮膚の恒常性の維持に寄与することを明らかになった。皮膚恒常性の解明はADを代表とする炎症性皮膚疾患の新規治療法及び予防法の開発に繋がる。
1: 当初の計画以上に進展している
これまでにTregが皮膚バリア破壊によってTregが真皮に浸潤することや、Tregの新規遊走因子としてIL-33を同定し、International Journal of Molecular Sciences誌に成果を発表したことから、当初の計画以上に進展していると考えている。
今後は、皮膚バリア破壊モデルにコナヒョウヒダニ虫体含有軟膏を塗布するADモデルマウスを使用し、Tregの動態の検証及びTregを標的とした治療方法の開発を目指す。
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