研究課題
ヒトの身体の最も外側に位置する皮膚には、物質の透過を防ぐ強力なバリアが存在している。この皮膚バリアは病原体、抗原、有害物質の侵入を阻止し、体内からの水分の蒸発も防いでいる。皮膚バリアの破壊に伴うドライスキンは、アトピー性皮膚炎(AD)や乾癬等の皮膚炎を引き起こす。一方、免疫系の恒常性維持に働いているT細胞である制御性T細胞(Treg)のマスター転写因子であるFoxp3の変異や欠損より引き起こされるIPEX症候群やscurfyマウスでは、しばしば皮膚炎が認められ、皮膚恒常性にTregが関与することが示唆されるが、皮膚バリア機能とTregの関係性は不明瞭である。そこで本研究は、ADを代表とする炎症性皮膚疾患の新規治療法及び予防法の開発を目指し、皮膚バリア破綻におけるTregの役割を解明することを目的として、皮膚バリア破綻モデルマウス(4% SDS塗布)の解析を行った。その結果、皮膚バリア破壊によってTregが真皮内に浸潤し、抑制性サイトカインを産生していることを見出した。また、Tregの浸潤には表皮角化細胞から放出されるIL-33が直接関与していることを発見し、前年度までに報告した。今年度は更なる解析を行い、 ADモデルマウス(4% SDS + ダニ虫体成分含有軟膏塗布)では、Treg数がコントロール群である皮膚バリア破壊モデルマウスに比べて減少することを見出した。現在なぜADモデルマウスではTreg数が減少するのかを、ダニ抗原由来プロテアーゼに着目して研究している。皮膚恒常性及びAD病態形成機序の解明は炎症性皮膚疾患の新規治療法及び予防法の開発に繋がる。
2: おおむね順調に進展している
AD発症メカニズムにダニ抗原由来プロテアーゼ‐IL-33軸が関与していることを示唆する結果が得られたため。
今年行った実験の結果、AD発症メカニズムに抗原由来プロテアーゼが関与し、IL-33-Treg軸を揺るがすことが判明した。来年度は、IL-33-Treg軸を揺るがす抗原由来プロテアーゼについて更に明らかにし、AD発症メカニズムの解明及び新規治療法の開発に繋げたいと考えている。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件) 図書 (2件)
Cells.
巻: 5 ページ: 239
10.3390/cells12020239.
J Dermatol.
巻: 00 ページ: 1-4
10.1111/1346-8138.16754.
J Allergy Clin Immunol.
巻: 149 ページ: 1085-1096
10.1016/j.jaci.2021.08.003.
Lasers Med Sci .
巻: 37 ページ: 3727-3731
10.1007/s10103-022-03570-8.
Pharmaceuticals (Basel).
巻: 19 ページ: 1022
10.3390/ph15081022.