研究課題/領域番号 |
21K16308
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
井上 英樹 昭和大学, 医学部, 講師 (80813162)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 喘息 / アレルギー性喘息 / 喘息モデルマウス / 気道上皮 |
研究実績の概要 |
重症喘息では気道上皮組織における、上皮バリアー機能の低下が認められ慢性気道炎症の原因となることが想定されている。気道上皮細胞の脆弱性は、気道から侵入した病原体やアレルゲンの曝露によって気道組織内への侵入を許し、気道炎症悪化の原因となる。本研究では、気道上皮細胞における気道上皮バリアー機能の低下の原因として、角層蛋白に着目し、上皮角層蛋白発現と気道炎症との関与を明らかにし、気道上皮角層蛋白の補充が喘息の病態を改善するかを明らかにすることを主目的とする。気道上皮細胞培養や喘息モデルマウスを用いた実験を行い、気道上皮角層蛋白と気道上皮バリアー機能や気道炎症の関連を明らかにする。真菌の一種であるアルテルナリアをマウスに経気道的に暴露し、アレルギー性喘息モデルマウスを作成し気道組織の遺伝子発現解析を行った。その結果、アルテルナリア曝露を行ったマウスでは角層上皮蛋白の遺伝子発現の低下が認められた。この結果につき、論文作成を行い、論文が受理・掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、in vitroでの検討として気道上皮細胞として16HBE14o-, Calu-3を用い、気相―液相下(ALI)培養を行い生体に近い条件での細胞培養を行っている。アレルゲン曝露としてアルテルナリアやダニ抽出液の曝露を行い、気道上皮の状態や各種サイトカインの分泌の検討を行っている。上皮角層蛋白の1種であるフィラグリンやケラチン6bなどの発現と気道上皮バリアー機能、気道炎症との関連を検証している。
|
今後の研究の推進方策 |
気道上皮細胞における角層蛋白発現と気道上皮バリアー機能、気道炎症の関与を検討し、気道上皮角層蛋白の補充が喘息病態を改善するか明らかにする。気道上皮細胞における上皮角層蛋白(フィラグリン、ケラチン6bなど)の発現と気道上皮バリアー機能、気道炎症の関連を、細胞・動物モデル・臨床検体それぞれの段階において検証を行う。気道上皮細胞で角層蛋白遺伝子のノックダウンを行い、上皮角層蛋白の喪失が気道上皮バリアー機能の低下を招き気道炎症を惹起することを明らかにする。喘息モデルマウスにおいて上皮角層蛋白補充治療が気道炎症の悪化を抑制することを示す。これにより喘息の新たな治療アプローチを開発することを本研究の目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の進捗状況の変化により本年度に行う実験を次年度以降に計画したため、次年度使用額が発生した。また、新型コロナウイルス感染症の影響により旅費の支出がなかったため、次年度使用とした。 実験計画としては、in vitroで、気道上皮細胞の上皮角層蛋白発現と気道上皮バリアー機能、気道炎症の関連を明らかにする。気道上皮細胞株として、上皮接着因子が発現しているCalu-3、16HBE14o-及びヒト気道上皮細胞(NHBE)を用いる。細胞をTranswellインサートで培養し、液相下(submerged)もしくは、気相―液相下(ALI)培養で気道上皮細胞を分化させる。外部刺激として、ハウスダスト、真菌(アルテルナリア)抽出液を気相培地面に添加し、上皮角層蛋白の発現と細胞間接着因子(カドヘリン、ZO-1など)の発現、炎症性サイトカイン(IL-6、IL-8など)の分泌を測定する。上皮細胞間結合性の評価として、経上皮電気抵抗を測定する。気道上皮細胞修復能の評価として、scratch-woundアッセイを用いる。siRNAによる上皮角層蛋白遺伝子のノックダウンが、気道上皮バリアー機能や気道上皮細胞修復能に影響を与えるか調べる。
|