研究課題/領域番号 |
21K16312
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
齊藤 高志 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (40764981)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脂肪由来間葉系幹細胞 / 低分子量ヘパリン / 炎症 / 間質性肺炎 / 強皮症 / 線維化 / 細胞医薬 / ループス腎炎 |
研究実績の概要 |
全身性強皮症 (SSc) は間質性肺炎 (ILD) などを主徴とする自己免疫疾患であり、有効な治療に乏しい難治性の疾患である。ループス腎炎 (LN) は、自己免疫性疾患の一つである全身性エリテマトーデス (SLE) に合併して生じる腎臓病である。 脂肪由来間葉系幹/間質細胞 (ASCs) は脂肪組織に豊富に存在し、低侵襲かつ容易に採取し、培養可能な幹/間質細胞である。抗炎症、抗線維化、病変部位集積能をもつため、細胞を静脈内に投与し治療を試みる医薬化が期待されている。本研究は、低分子量ヘパリン (LMWH) で活性化させたASCsを病態モデルマウスに経静脈投与しLMWH活性化ASCs (hepASCs) の治療効果を確かめた。 昨年度に確立した、hepASCsを用いた動物実験を行った。C57BL/6Jマウスの背部皮下に持続ポンプを用いてブレオマイシン (BLM) を1週間注入することで、ILDモデルマウスを、Balb/cマウスの背部皮下にBLMを4週間、毎日連続皮下注入し、SScモデルマウスを、またNZBマウスとNZWマウスのF1であるNZB/W F1マウスを用いてLNモデルマウスをそれぞれ作製した。hepASCsを病態モデルマウス作製開始2週間経過後に投与し、線維化抑制効果を評価した。いずれも通常ASCs投与群と比較し、hepASCs投与群は有意に治療効果が認められた。ASCsのSDF-1発現量増加による病変部位集積、HGF産生量増加による抗炎症、抗線維化効果が向上したためと考えられた。 ILD、SSc、LNモデルマウスを用いた研究はそれぞれ、Biochem Biophys Res Commun、Arthritis Res Ther、Front Immunolに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は予定より早くin vitro細胞培養実験から病態モデル動物を用いた実験が完了し、仮説通りの結果が得られた。データをまとめ論文を投稿しアクセプトされた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究の中で、治療能の高いASCsの有用性が確かめられた。一方、in vitro細胞培養実験でASCsは分裂、継代を繰り返すと細胞老化がすすみ、治療能が低下する可能性が示唆された。今後は細胞生物学的アプローチや工学アプローチを組み合わせて、細胞老化を抑制、または細胞が若化できる培養系や細胞活性化方法の確立を目指した研究に踏み込んでいく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が順調に進んだため物品費の使用を抑えることができた。今後、これまでの研究から得られた新たな課題を解決するために、複数のタンパク質量の変化等を調べる予定であり、それらにかかる費用に研究費を使用する予定である。 コロナ禍のため、海外学会発表をオンラインで行ったため、旅費の使用を抑えることができた。次年度も今回の研究成果を海外学会で発表するため、次年度に旅費を使用する予定である。
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