研究課題/領域番号 |
21K16314
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 光 東北大学, 医学系研究科, 助教 (20832124)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | クリプトコックス / 感染免疫 / 糖尿病 / Th1 |
研究実績の概要 |
クリプトコックスは莢膜を持つ酵母型真菌であり、経気道感染により肺クリプトコックス症を引き起こし、さらに中枢神経系に播種することで重篤な脳髄膜炎を引き起こす。クリプトコックス症のリスク因子として、糖尿病 (DM) が臨床上特に問題となるが、DMが宿主の免疫応答、特にクリプトコックスの排除に重要な抗原特異的Th1免疫応答に与える影響については不明な点が多い。そこで本研究では、マウスモデルを用いてDMがクリプトコックスの感染防御に与える影響について解析を行った。 高グルコース環境 (HG) がマクロファージ (Mφ) の活性化に直接関与するか検討を行うために、マウスMφ細胞株をHG下で培養後、本真菌の破砕物で刺激した結果、短期間培養した細胞ではNO産生が亢進したのに対し、長期間培養した細胞ではNO産生低下、iNOS mRNA発現低下、生菌の殺菌効率低下がみられた。これらの低下は還元型グルタチオン (GSH) 添加により回復した。 ストレプトゾトシン (STZ) をクリプトコックス特異的T細胞受容体を高発現したCnT-IIマウスに投与することで作製したDMマウスは、末梢血中のGSHの濃度が急性期で亢進、慢性期で低下した。このマウスの脾細胞をクリプトコックス抗原で刺激した結果、急性期ではIFN-γ産生が増加し、慢性期では低下した。このIFN-γ産生の低下はGSHの添加により回復した。慢性DMマウスの脾細胞から樹状細胞とT細胞を単離し、同様に刺激した結果、樹状細胞ではなく、T細胞の機能が低下していた。慢性DMマウスに本真菌を感染させた結果、肺内生菌数の増加、生存率の低下、IFN-γ産生の低下、肉芽腫形成の低下がみられた。 DMでは急性期と慢性期で免疫応答へ与える影響が異なり、そこにはグルコースの代謝に伴うGSHの増減が関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vivo、in vitroの実験を並行して行い、クリプトコックス特異的な免疫応答へのDMの影響について解析を行い、興味深い結果が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に得られた知見をもとに、クリプトコックス感染防御におけるDMの影響について、特にin vivoの解析を中心に解析を実施し、DMにおけるクリプトコックスに対する易感染機序を解明するとともに、クリプトコックス症の発症予防法の開発につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度の実験を効率よく実施することが出来たが、約5万円の未使用額が生じた。 令和4年度に未使用額も含め、研究費として使用する予定である
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