クリプトコックスは経気道的に肺へと感染する酵母型真菌であり、感染防御にはTh1型の免疫応答が重要である。クリプトコックス症の重大なリスク因子として糖尿病(DM)が知られているが、DMが直接的に免疫応答に与える影響については不明な点が多い。そこで本研究では、DMがクリプトコックスの感染防御に与える影響について解析を行った。 クリプトコックスの主要なT細胞抗原であるCda2に特異的なT細胞受容体を高発現したトランスジェニックマウス (CnT-II) にストレプトゾトシンを投与し、DMマウスを作成した。このマウスにクリプトコックスを感染させた結果、コントロールマウスと比較して、肺内生菌数の増加、生存率の低下、Th1応答の低下、肺の肉芽腫形成の低下を認めた。DMマウスより脾細胞を採取し、Cda2で刺激を行った結果、コントロールマウスと比較してT細胞中のIFN-γ発現が低下し、Treg細胞が増加した。脾細胞よりT細胞と樹状細胞をそれぞれ単離し、Cda2で刺激した結果、このIFN-γ産生低下は樹状細胞側ではなく、T細胞の機能低下によるものであることが明らかとなった。脾細胞よりT細胞を単離し、Th1分化条件で培養した結果、Th1細胞への分化能はDMマウスでコントロールマウスと比較して低下していなかった。 以上の結果より、DMマウスではクリプトコックス特異的なTh1細胞の減少とTreg細胞の増加が易感染性に関与していることが示唆された。一方で、Th1細胞への分化能は変化しておらず、Th1細胞の機能低下に関与する何らかの別のメカニズムの存在が考えられた。
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