研究課題/領域番号 |
21K16316
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 真 東京大学, 医科学研究所, 助教 (30871339)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | マラリア / 疫学 / 妊娠 / 熱帯医学 |
研究実績の概要 |
マラリアは熱帯から亜熱帯地域で全世界に広く流行する致死的な感染症である。年間2億人以上がり患し、40万人の死者が出ている。妊婦は特にマラリアに感染しやすく、また感染すると重症化しやすいことが知られている。また、妊娠中にマラリアにり患することは母体のみならず、胎児の生存や発育、出生後の長期的な成長や成人後の慢性疾患にも悪影響を及ぼす可能性が報告されている。マラリア蔓延地域に居住する1億人を超える妊婦をマラリアから予防し、また適切に治療することは、すなわち母児をともに救うこととなる。しかしながら、一般的に妊婦に対する治療薬の研究はあまり進んでいない。通常、非妊娠成人の投与量が用いられていることが多いが、一般に妊娠中の薬物動態は非妊娠時から変化しており、必ずしも非妊娠成人の投与量が適切とは限らない。妊娠中の抗マラリア薬の治療効果は低下することが本研究課題主研究者らにより報告されており、その一因として投与量が不適切である可能性が示唆されている。一方で、用量依存性に副反応が強くなる(より出現しやすくなる)場合もあり、母児の両者に対する効果と安全性の両面から適切な用量を模索する必要がある。 本研究では抗マラリア薬を妊娠中に用いた場合の抗マラリア薬の血中濃度を測定し、妊娠中の適切な投与量の推定、児への抗マラリア薬の移行、静脈血ではなく末梢血の有用性、臨床的な有効性・安全性と薬物血中濃度の関連について探究することを計画している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は研究倫理申請を完了したが、新型コロナウイルス感染症の流行もあり、エフォートが研究に割けなかったこと、また海外渡航が制限されていたことにより、実際の研究の推進が困難であった。一方、令和4年度は、本基研究を発展させた国際共同研究加速基金研究と併せ、タイ王国の協力機関に長期滞在を行い、サンプルの整理、データの整理を行い、また外部測定機関において血液サンプルの血中濃度測定を実施し、これらを完了させることができた。薬物濃度の測定データはすでに受領しており、令和5年度は統計学的な解析、疫学的な探究を行い、論文を投稿する予定である。新型コロナウイルス感染症の影響により令和3年度の研究推進ができなかったこともあり、当初の予定である2年間では論文の発表まで進めることができなかったため、研究期間を1年間延長申請し、令和5年度内で完了することを目標としている。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年の実施報告書の計画通り、令和4年度はサンプルの整理、データの整理、サンプルの測定のいずれも完了することができた。令和5年度は解析を行い、論文を執筆し、年度内に少なくとも投稿までは行いたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により当初の計画がすべて1年遅れで進行しているため、令和4年度で薬物濃度測定を行い、令和5年3月にデータを受領し、支払いは令和5年4月に行われた。今後、令和5年度では統計解析に必要な物品の購入、必要に応じて論文投稿費用などが必要となる見込みである。
|