本年度は、昨年度見出したレプトスピラ感染時の脂肪細胞の脂肪分解について、詳細な解析とその意義の追求を行なった。具体的には、マウス由来脂肪前駆細胞3T3-L1を脂肪細胞に分化させ、分化10日後にレプトスピラを感染(共培養)すると、3T3-L1に脂肪分解が起こる。この現象について、レプトスピラが有すると思われる脂肪分解因子の探索を行なった。 昨年度行ったRNA-seq法での遺伝子発現変動の網羅的解析について、再度詳細な解析を行ったところ、脂肪分解に関与する遺伝子Xが有意に発現低下していることを見出した。Xは細胞膜上の受容体で、リガンド刺激によって脂肪分解を促すシグナル伝達が促進されること、また連続的なリガンド刺激を受け続けるとRNAレベルでネガティブフィードバックを受けることが知られている。この結果は、レプトスピラが受容体X様のリガンドを分泌している可能性を示唆しており、脂肪分解因子候補として今後解析を進める。 また脂肪分解が起こった時点でのレプトスピラの遺伝子Aの遺伝子発現量をRT-qPCR法で定量したところ、レプトスピラ単体培養時に比べ有意に発現量が増加していた。レプトスピラの遺伝子Aは、マクロファージ内のシグナル伝達を変化させることが過去報告されており、このシグナル伝達経路は脂肪細胞では脂肪分解が促進されることが知られている。レプトスピラの遺伝子Aについても脂肪分解因子候補として今後解析を進める。 また上記の脂肪分解が生体への感染時にも起こるのか、in vivo感染実験系を用いて確認した。具体的には、マウス(C57BL/6J、8週齢、オス)にレプトスピラ(10の7乗菌体/個体)を経皮感染させ、感染4日後に皮下脂肪組織を採取しHE染色を行った。その結果、皮下脂肪組織に部分的な脂肪分解が起こっていた。今後その意義についても解析を進める。
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