研究課題/領域番号 |
21K16321
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
泉田 真生 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (90567299)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自然免疫 / 抗ウイルス因子 / 自己免疫疾患 |
研究実績の概要 |
本研究では、自然免疫レベルで、ウイルス感染に対する宿主側の感染防御因子を発見し、その機序を解明することで、治療薬を迅速に開発できるための分子基盤構築を目指す。 自己免疫疾患や自己炎症症候群は炎症サイトカインが過剰に産生される疾患群であり、多くの疾患関連遺伝子が同定されている。しかし遺伝子の本来の機能が不明なものが多い。研究代表者はこういった疾患群の発症に関連する遺伝子の本来の機能に抗ウイルス作用があるのではないかと考えた。 今年度は自己免疫疾患の感受性遺伝子“X”に着目し、実験を進めた。遺伝子をヒト細胞からクローニングして発現ベクターを作成した。次にこれをパッケージング細胞に、HIVエンベロープもしくはVSV-Gエンベロープと、HIV-Gag,Polをトランスフェクションして、pseudo virusを作成した。標的細胞にpseudo virusを接種してルシフェラーゼアッセイにて感染を定量比較した。遺伝子“X”がヒト培養細胞レベルで発現が認められることを確認してCRISPR/Cas9を用いて、遺伝子ノックアウト細胞株を作成した。これらの細胞株にmurine leukemia virus(MLV)、HIV-1、VSV-G -pseudotyped retrovirus vectorを接種し感染効率を測定したところ”X”は強力な抗ウイルス因子であることがわかった。次に、"X"の細胞毒性を観察したが、大きな細胞毒性を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では抗ウイルス因子は、海洋下等生物や、自己免疫疾患の感受性遺伝子から探索する予定であった。候補遺伝子の絞り込みにおいて、自己免疫疾患から着手し抗ウイルス因子の絞りこみに成功したため、この点において順調に進展していると判断した。使用経費は、抗ウイルス因子の作用機序の解明に当てる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、pseudotype virusを用いて抗ウイルス効果の評価を行なった。今後は、replication competent HIVを用いて、ヒトプライマリ細胞を対象にした実験を行う予定である。さらに、抗ウイルス効果の作用機序を解明していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の実験は、これまでの使用試薬のストックを使用したため。今後は、感染抑制機序の解明を行なっていく。 また、次年度に繰り越した経費は、所属研究室のHIV-1コホート研究で得た検体を用いて、自己炎症性症候群の原因遺伝子解析のための次世代シークエンスパネルにて解析し、遺伝子発現量とウイルス量や疾患の表現型の関連を疫学的に決定する。
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