研究課題/領域番号 |
21K16322
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
平山 達朗 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (40836269)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Candida auris / 腸管 / 薬剤耐性 / キャンディン系 / FKS1 |
研究実績の概要 |
Candida aurisは、侵襲性カンジダ症の原因菌であり、複数の抗真菌薬に耐性であることが多く、キャンディン系抗真菌薬を投与後に多剤耐性を獲得したという報告がある。カンジダ属はin vivoにおいて腸管で薬剤耐性を獲得することが知られているが、C. aurisについて検討された研究はほとんどない。また、in vitroではキャスポファンギン(CPFG)がミカファンギン(MCFG)に比べて耐性を誘導しやすいという報告もある。そこで我々は、マウスモデルを用いてC. aurisの薬剤耐性機序を調べ、薬剤によって耐性誘導に違いがあるのかを検証した。マウスにC. aurisを経口接種した後、抗菌薬を経口投与し腸内細菌叢を撹乱した。4日後からMCFGもしくはCPFGを12日間連日腹腔内投与した後、便から分離されたコロニーをピックアップし、薬剤感受性およびFKS1 hot spotの変異を調べた。耐性機序としてFKS1のhot spot 1、hot spot 2に変異を持つ株が複数得られ、その中にはこれまで報告のない変異も含まれていた。現在、CRISPR-Cas-9を用いて当該遺伝子の導入もしくは修復を行い、薬剤耐性に寄与するかを検証する研究を行っている。さらにアゾール系を使用していないにも関わらず、アゾール系にも耐性となる株が複数得られた。C. aurisについては臨床的にキャンディン系で治療をした際にアゾール系にも耐性を持つ株が分離されたという報告があり、今回の研究結果も臨床での耐性化と関連している可能性がある。この耐性機序についての解明も進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vivoで腸管に定着させたC. aurisに抗真菌薬を暴露することで耐性化することが確認できた。またその耐性機序についてこれまで報告のない変異も含め、複数の遺伝子変異と関連があることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
既知の遺伝子変異を有さない耐性株についてはFKS1/FKS2全体のシークエンスを行い、元株と比べて変異が入っている場合は、CRISPR Cas9などの手法を用いてゲノム編集を行い、変異が薬剤耐性に関与するかを検討する。 また、アゾール系抗真菌薬に耐性となった株は、耐性化の機序として知られているCDR1, PDH1, SNQ2などの薬剤排出ポンプに関与するとされる遺伝子の発現量と、エルゴステロール生合成に関与するERG11の変異および発現量を調べる。各薬剤の種類や投与量に応じて、耐性株が分離される割合や耐性機序に違いが見られないかを検証する。 既知の薬剤耐性機構で説明がつかない菌株については、whole genome sequenceやRNA sequenceによる網羅的な遺伝子変異や病原因子の発現を調べ、より臨床に近い環境での薬剤耐性機序の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の研究は既存の物品を用いることが可能だったため次年度使用が発生した。次年度はwhole genome sequenceやRNA sequenceを用いた網羅的な遺伝子変異の探索およびCRISPR Cas9などの手技を用いた遺伝子の経費がかかる実験を予定しており、これらに充てる予定である。
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