研究課題/領域番号 |
21K16328
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
定本 聡太 東邦大学, 医学部, 助教 (30778436)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | クリプトコックス / マクロファージ / 肉芽腫 / 生体防御 |
研究実績の概要 |
クリプトコックス症では播種性感染に関わる危険因子や生態防御機構の詳細は不明な点が多い。本研究では、非HIV感染者で発症したクリプトコックス症に関して、細胞性免疫応答の中心であるマクロファージによる生態防御の差に着目し、播種群と限局群の2群に分けて肺病変の病理組織学的解析を進めている。具体的に、従来の古典的な病理組織学的な検討、免疫組織化学染色を用いた検討、画像解析を用いた検討の3段階で研究を進めている。 令和3年度は病理組織学的な解析として、従来の肺クリプトコックス症の病理組織学的な病型分類を参考としてマクロファージによる生態防御の差に焦点を当て、クリプトコックス症の肺病変の客観的な病理スコアリングシステム(Grading score)を考案・作成した。現在までに各群5例ずつ病理組織学的解析を行い、限局群のマクロファージの反応は播種群のマクロファージの反応と比較して、肉芽腫性応答が目立つ(Grading scoreのGradeが低い)傾向があることを確認した。病理組織学的解析の手法は概ね方向性が確認できたため、引き続き症例を増やし、解析を進めていく。 また既報での検討でクリプトコックスの感染防御機構への関与が指摘されているM1マクロファージや、サイトカイン関連の抗体を用いて、免疫組織化学の解析も開始した。現時点までにマクロファージの活動性が高い病変(Grading scoreのGradeが低い)ではiNOS陽性マクロファージの割合が高い傾向があることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた計画の通り、令和3年度は病理組織学的検討に加え、免疫組織化学的な検討も開始することができた。病理組織学的検討はクリプトコックス症の肺病変の客観的な病理スコアリングシステム(Grading score)を考案・作成した。本スコアリングシステムは播種性感染のリスク評価や臨床での実用性を考慮し、肺クリプトコックス症の病理組織学的診断時において、日常遭遇しうる生検、外科切除材料のいずれにも対応できるよう配慮した。本スコアリングを用いて現在までに各群5例ずつ病理組織学的解析を行い、限局群のマクロファージの反応は播種群のマクロファージの反応と比較して、肉芽腫性応答が目立つ(Grading scoreのGradeが低い)傾向があることを見出した。免疫組織化学の検討ではマクロファージ及び、サイトカインの免疫組織学的な抗体をいくつか購入し、検討を進めている。以上より、本研究計画は概ね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、引き続き抽出した症例の病理組織学的な解析を進めるとともに、当初の計画通り、マクロファージに着目した免疫組織化学の検討および画像解析に関しても解析を進めていく。免疫組織化学の検討はマクロファージ及び、いくつかのサイトカインの免疫組織化学の抗体を購入し、検討を進めているが、サイトカインの抗体に関してはホルマリン固定後の病理切片における免疫組織化学染色の再現性や染色性に難がある傾向がみられたため、免疫組織化学染色はマクロファージの表面メーカーを中心として解析を進めていく方針である。画像解析に関しても菌に対するマクロファージの応答(マクロファージの密度及び細胞質内の菌数)に関して画像解析ツールを併用して定量的な測定を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は新型コロナウイルスの流行に伴い、予定していた国際学会の参加を取りやめたこともあり、当該年度の所要額に比して実支出額が少ない結果となった。令和3年度の未使用額については、令和4年度と合わせ、抗体や試薬などの購入費のほか、学会参加に伴う旅費、論文の投稿料等に使用する予定である。
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