研究課題/領域番号 |
21K16329
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
吉村 芳修 福岡大学, 医学部, 講師 (90771197)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 肺炎クラミジア / エクソソーム / 脂質代謝異常 / 褐色脂肪細胞 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、肺炎の原因微生物である肺炎クラミジアが感染宿主の脂質代謝系を利用して栄養を獲得し、宿主内での生存を有利に進めていることなどをマウスの感染実験系を用いて明らかにしてきた。本研究年度では、主に肺炎クラミジア感染マウスの血清由来エクソソーム中のmiRNAの解析を進めた。次世代シーケンサーのデータを再解析した結果、肺炎クラミジア感染で変化する可能性のあるエクソソーム中のmiRNAが複数検出された。それぞれのmiRNAについてLNA (Locked nucleic acid)由来のプライマーを用いた定量的逆転写PCR法を用いて評価を進めている。さらに、これまでの実験では肺炎クラミジアの菌株としてChlamydia pneumoniae AR39株を用いて解析を進めてきたが、感染によってマウス個体に生じる脂質代謝関連の病態が、特定の菌株に特異的なものでないことを確認するために、異なる肺炎クラミジアの血清型であるChlamydia pneumoniae CWL029株でも感染実験系を立ち上げた。CWL029株を経気道的に感染させた場合にも、AR39株感染の場合と同様にマウスに脂質代謝異常に起因する病理学的な変化を引き起こすことを確認した。このことから肺炎クラミジア感染によるマウス個体の脂質代謝異常はAR39株のみの特異的な現象ではないと考えられる。さらに、CWL029株感染マウス由来の血清エクソソームについても同様に解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に得られた次世代シーケンサーを用いた肺炎クラミジア感染マウスの血清エクソソーム由来のmiRNAのデータを再解析し、有意な結果を得るまでに時間を要した。さらに、研究対象としている現象が特定の病原株に特異的なものではないということを確認するために別の血清型を用いた実験を追加で行ったため。
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今後の研究の推進方策 |
次世代シーケンサーの解析結果から得られている有意に変化のあると考えられたmiRNAについて解析をさらに進める。具体的には、感染実験の回数を追加して特定のmiRNAの変化を定量的逆転写PCR法で評価および再現性の確認を行う。さらに、miRNAのターゲットである遺伝子のスクリーニングを行い、実際に標的臓器特異的なmiRNA量の評価及び、標的遺伝子の発現変化を評価することにより、病態発現に対するエクソソーム由来miRNAの関与についての解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シーケンサーによるmiRNAシーケンスの外注を行う予定で主な予算の執行を検討していたが、既存データの再解析を行うことにより、一部のmiRNAに有意な変化が観察されたため検証実験を行うことを優先することとした。そのため、次世代シーケンスの外注を行わなかったことにより、次年度使用額が生じた。 また、異なる血清型の肺炎クラミジアでの再現実験に時間を要し、実験に予算をあまり必要としなかった。 繰り越した予算については、主にmiRNA解析の試薬類を購入する費用及び動物実験を行うための費用に充てる予定である。
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