研究実績の概要 |
最終年度では、下記項目について検討を行った。 1)SARS-CoV-2オリジンと変異株の病原性比較:hACE2 Tgマウスにオリジン、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、オミクロン株(BA1, BA2, BA5)を同じ感染力価で感染した。結果、オリジン<アルファ<ベータ<ガンマ株の順に、体重減少と生存率低下が認められた。ヒトで強毒株であるデルタ株とBA5はオリジンと同等の病原性を示した。一方、BA1とBA2の病原性はオリジンよりも低下しており、一部マウスは感染14日目も生存していた。オリジン同様、各変異株もまた、感染初期に肺でウイルスNタンパクが検出され、経日的に脳で増加していた。さらに、Multiplexアッセイでオリジン、デルタ、BA1およびBA2の肺と脳におけるサイトカイン/ケモカインを測定した結果、TNFα、IL-6、IL-12p40、MCP-1、MIP-1β、CXCL10などの増加が認められた。特に、脳で顕著に増加していたことは、本モデルマウスが脳炎で死亡することを強調する結果となった。 2)抗ウイルス薬を用いた治療効果検討:医薬品候補品の評価系としての有用性を高めるため、レムデシビル(50 mg/kg/day, i.p.)、モルヌピラビル(500 mg/kg/day, p.o.)をオミクロン株感染12時間後から5日目まで、1日1回または2回投与した。結果、抗ウイルス薬の投与は体重減少と生存率低下を完全に抑制した。 3)医薬品候補品やバイオマーカーの探索評価:①オリジン、デルタおよびオミクロン株の感染後にVHH抗体を投与することでマウスの生存期間が延長する、②重症COVID-19患者で低下するd-アミノ酸は、本モデルマウスでも体重の減少に伴って低下することから、血中d-アミノ酸濃度は感染の重症度を反映するバイオマーカーとなりうる。これらを共同研究により見出した。
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