肥満は、複数の臓器における代謝制御に基づく臓器間代謝サイクルを乱し、食後高血糖や2型糖尿病などの代謝疾患を引き起こします。臓器代謝はDNA・RNA・タンパク質・代謝物の各オミクス階層にまたがるトランスオミクスネットワークにより制御されており、まだその全貌は明らかにされていません。本研究では、糖投与後の野生型 (WT)マウスとレプチン欠損肥満(ob/ob)マウスそれぞれについて、肝臓と骨格筋の代謝制御ネットワークを構築し、これらを統合することにより肝臓筋肉連関トランスオミクスネットワークの構築を試みました。 本年度は、筋肉と肝臓の糖応答トランスオミクスネットワークの統合解析を進めました。Metabolic Atlasデータベースよりマウスの代謝マップを取得し、発現量オミクスデータと代謝酵素及び輸送体の紐づけを行うことで、食後に血液とのやり取りが活発な代謝物を同定しました。食後に変化する代謝物リストと代謝酵素/輸送体リストを用いて自動的に活性化/不活性化された臓器間代謝サイクルを自動的に探索するアルゴリズムの開発を進めました。またプログラミングの知識が少なくてもトランスオミクスネットワークの構築ができるよう操作が簡易なWebベースのトランスオミクス解析ツールの開発も進めました。 研究期間全体を通した成果としては、筋肉の糖応答トランスオミクスネットワークに関する論文を中心に7本の関連論文を発表することができました。研究筋肉と肝臓の糖応答ネットワークの解析結果はまとまり次第論文として発表する予定です。
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