研究課題
免疫チェックポイント阻害薬(ICIs)による下垂体障害は急性副腎不全となり得る重篤な免疫関連有害事象であり、その臨床像の解明と発症予測マーカーの同定は喫緊の課題である。研究代表者は前年度に、下垂体障害を予測するバイオマーカーを解明すべく、下垂体障害発症例と非発症例の血清中の抗下垂体抗体を解析し、治療前の抗下垂体抗体保有率がACTH単独欠損症で有意に高い(64.7%)こと、腫大を伴う複合型下垂体機能低下症では治療前の抗下垂体抗体は陰性であるが薬剤投与後に陽転化する(80.0%)ことを明らかにした。引き続き症例を集積し、下垂体障害発症者の長期的な障害ホルモン・画像変化・全生存率を観察し、それらのバイオマーカーの探索を継続する。また、研究代表者は名古屋大学医学部附属病院においてICIs治療を行う全ての患者を対象として、下垂体障害を含むすべての内分泌障害を前向きに評価する臨床研究を行っており、本研究もこのコホートにおいて遂行されている。この臨床研究の中で、これまでに甲状腺自己抗体が抗PD-1抗体または抗CTLA-4抗体+抗PD-1抗体併用療法による甲状腺障害のバイオマーカーとなることを報告した。さらに2022年度は、抗PD-L1抗体による甲状腺障害では投与前の血清TSH値高値、抗サイログロブリン抗体陽性、チロシンキナーゼ阻害薬又はラムシルマブの投与歴がリスク因子となることを明らかにした。この研究成果は米国内分泌学会より発行されている科学誌「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 2022」に掲載された。
2: おおむね順調に進展している
2023年3月31日時点で免疫チェックポイント阻害薬投与症例は1213例まで増えており、2022年度の1年間では新規に免疫チェックポイント阻害薬による下垂体障害が8例で認められており症例集積は順調である。
最近広く使用されるようになった抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体の併用療法による下垂体障害の症例が集積されてきており、抗PD-1抗体単剤による下垂体障害と比較した臨床的特徴や他のirAEとの合併、バイオマーカーについて解析する。
バイオマーカー探索のための実験計画が変更となったため、次年度使用が生じた。未使用額は、次年度により多くの実験用物品が必要なため、それらに使用予定である。
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The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻: 107 ページ: e4115~e4123
10.1210/clinem/dgac467.
Best Practice & Research Clinical Endocrinology & Metabolism
巻: 36 ページ: -
10.1016/j.beem.2022.101660