研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬(ICIs)による甲状腺障害や下垂体障害は頻度の高い免疫関連有害事象(irAEs)であるが、その正確な臨床像や発症予測マーカーは明らかではなかった。申請者は2015年11月より名古屋大学医学部附属病院においてICIs治療を行う全ての患者を対象とした前向き研究を行っており、先行研究において、ICIsによる下垂体障害は既報の後ろ向き研究よりはるかに高い頻度で認められること、また2つの異なる病態(下垂体炎とACTH単独欠損症)を呈し得ること、そして特筆すべきことに下垂体障害発症者は非発症者に比し生命予後が有意に延長することを明らかにした(Kobayashi T et al., J Immunother Cancer 2020)。この結果を踏まえ、下垂体障害を予測するバイオマーカーを解明すべく、下垂体障害発症例と非発症例の血清中の抗下垂体抗体を解析し、治療前の抗下垂体抗体保有率がACTH単独欠損症で有意に高い(64.7%)こと、下垂体炎では治療前の抗下垂体抗体は陰性であるが薬剤投与後に陽転化する(80.0%)ことを明らかにした。また、下垂体障害発症例と非発症例のHLAを解析したところ、ACTH単独欠損症においてはCw12、DR15、DQ7、DPw9が、下垂体炎ではCw12、DR15が有意に高率に認められた(Kobayashi T et al., J Immunother Cancer 2021)。この結果から着想を得て、抗下垂体抗体をプローブとして下垂体irAEに関連する標的抗原を同定する実験を行い、候補となる可能性のある抗原を同定した。また、これまでに下垂体irAEのリスク因子として同定したHLAは抗原レベルであったが、ハプロタイプでも解析を行い下垂体障害との関連を見出している。
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