研究課題/領域番号 |
21K16353
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤島 裕也 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10779789)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | キサンチン酸化還元酵素 / アディポネクチン / T-cadherin / 糖尿病 / 非アルコール性脂肪性肝疾患 / 動脈硬化症 |
研究実績の概要 |
1)NAFLDにおける血中XOR活性の上昇と、その血管障害・動脈硬化性疾患への関与 2型糖尿病患者や減量・代謝改善手術を施行された高度肥満症例を対象とした縦断研究により、血中のキサンチン酸化還元酵素(XOR)活性が血糖指標やBMIの変化ではなく、ASTやALTといった肝逸脱酵素と強く相関することを報告した(J Diabetes Investig. 2021)。さらに、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)病態において血中に過剰に逸脱した肝XORが、脂肪細胞や血管内皮細胞から分泌されたヒポキサンチンを基質として、血中あるいは血管局所でプリン異化代謝活性を発揮すること、さらにROS産生等を介して血管新生内膜増殖を亢進させうることをマウスの頸動脈結紮モデルを用いて明らかとした(JCI Insight. 2021)。XORを介した肝臓と血管の新たな連関機構の存在を明らかとするとともに、心血管疾患予防の観点からNAFLD患者へのXOR阻害薬の有用性を提唱した。 2)アディポネクチンのT-cadherinを介した糖尿病性細小血管障害への作用の解明 網膜においてアディポネクチンは細動脈の血管内皮にT-cadherin依存的に局在した。また、糖尿病状態では網膜のアディポネクチン集積は減少したが、SGLT2阻害薬による治療で回復した。さらに、アディポネクチン欠損マウスでは、血管内皮のtight-junction破綻や血管透過性亢進といった、早期の糖尿病性細小血管障害の進展が顕著に悪化することを明らかとした(Sci Rep. 2022)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に大きな問題もなく、遺伝子改変マウスも樹立しつつあり、細胞実験も当初の計画通り順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
1)NAFLDにおける血中XOR活性の上昇と、その血管障害・動脈硬化性疾患への関与 高XOR血症を呈するヒトのNAFLD合併症例においても、マウスと同様に、XOR阻害剤による心血管リスクの低下が認められるかを検証する。高血圧を合併した高尿酸血症患者を対象として、24週間のXOR阻害薬(TopiroxostatもしくはFebuxostat)による治療を行った臨床研究(BEYOND-UA study、J Clin Hypertens. 2021)のサブ解析を行う目的で、自治医科大学 苅尾先生らの研究グループと共同研究契約を締結した。原研究で取得したデータベースを利用して、血管進展性の指標である心臓足首血管指数(CAVI)や尿中アルブミンの変化をアウトカムとして、肝機能関連指標(AST、ALT、FIB-4index)や血中XOR活性等の条件で層別解析を現在行っている。
2)アディポネクチンのT-cadherinを介した糖尿病性細小血管障害への作用の解明 網膜の細動脈においてアディポネクチンはT-cadherin依存的に血管内皮に集積している一方で、腎臓の尿細管周囲毛細血管においてはPDGFRα/ PDGFRβ陽性の血管周皮細胞(pericyte)にも集積していることを確認している(Am J Physiol Endocrinol Metab 2020)。現在T-cad floxマウスVE-cadherin CreERT2およびPDGFRα CreERT2マウスを入手している。これらのマウスを掛け合わせることで、血管内皮細および血管周皮細胞特異的なT-cadherin欠損マウスを樹立する。得られた欠損マウスを用いて、血管内皮細胞または周皮細胞のT-cadherinが、アディポネクチンの糖尿病最細血管障害抑制作用や血管透過性の維持にそれぞれどの程度寄与しているかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は順調に進展しているが、研究費に端数が生じたので次年度に繰り越して使用する。
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