研究課題/領域番号 |
21K16354
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤原 誠 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (50625697)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 軟骨無形成症 / 2型糖尿病 / 肥満 |
研究実績の概要 |
2型糖尿病は、本邦で社会・生活環境の変化に伴い罹患者数が増加しており、その予防および有効な治療法の開発は重大な課題である。2型糖尿病の病態と肥満には密接な関わりがあり、肥大した脂肪組織機能の異常によるインスリン抵抗性の惹起が耐糖能異常の機序として知られている。 軟骨無形成症は、著明な四肢短縮性低身長や特徴的な顔貌を呈する骨系統疾患であり、線維芽細胞増殖因子受容体3型(以下FGFR3)の遺伝子異常が原因となる。この変異FGFR3は恒常的に活性化された状態にあり、その下流の細胞内シグナル伝達分子の活性化を引き起こす。肥満は軟骨無形成症でよく見られる合併症として知られている一方で、軟骨無形成症では2型糖尿病の合併が少なく、脂肪分布や脂肪細胞に特異性があり、インスリン感受性が維持されるという報告がある。そのメカニズムは不明であるが、2型糖尿病の病態において、FGFR3シグナルが脂肪細胞や脂肪組織の分化や機能に関わることで、インスリン感受性ひいては耐糖能に影響している機序が示唆され、その解明は特に肥満と関連した2型糖尿病に対する未知の病態の解明および新たな治療戦略の開発に寄与することが期待できると考えられた。 令和3年度においては、軟骨無形成症モデルマウスの導入準備を行った。当初導入を予定していたFGFR3遺伝子に機能亢進型変異を有するマウスは、妊孕性がなく系統を維持できないことが判明したため、2系統のマウスの交配により、その都度モデルマウスを作成することとした。すなわち、機能亢進型変異を有するが、Cre蛋白の作用がないと機能喪失状態であるFGFR3遺伝子を有するマウスと、全身にCre蛋白を発現するマウスを、それぞれ別施設から導入する手続きを行い、ほぼ完了した状態である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスにより、2020年3月頃から断続的に可及的に不急の実験を控える必要が生じていること、および大阪大学医学部動物実験施設改修の大幅な遅れによるモデルマウス導入が遅れているため。
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今後の研究の推進方策 |
機能亢進型変異を有するが、Cre蛋白の作用がないと機能喪失状態であるFGFR3遺伝子を有するマウス(ノックインマウス)と、全身にCre蛋白を発現するマウス(Creマウス)それぞれの凍結胚から生体マウスを作成し、その交配により軟骨無形成症モデルマウスを作成する。十分な匹数を得られたのち、モデルマウスおよびコントロールマウスのそれぞれで、腹腔内ブドウ糖およびインスリン負荷試験を行い、その耐糖能の特性を評価する。更に、FGFRシグナル亢進と耐糖能の関連を確認するため、本症モデルマウスおよび野生型マウスへのFGFRシグナル阻害薬(FGFアプタマー等)の投与を行い、負荷試験で耐糖能を評価する。 また、並行して画像解析や脂肪採取・計測を行い、脂肪組織の形成や分布へのFGFR3シグナル亢進の影響を明らかにする。更に、マウスの骨髄または鼠径部脂肪組織から、骨髄間葉系細胞または間質血管細胞群(SVF: stromal vascular fraction)をそれぞれ単離し、脂肪分化や機能を比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスにより、2020年3月頃から断続的に可及的に不急の実験を控える必要が生じていること、および大阪大学医学部動物実験施設改修の大幅な遅れによるモデルマウス導入の費用が支払われなかったため。また、学会もオンライン参加となり、交通費や宿泊費は必要とならなかった。 使用計画としては、昨年度実施できなかったモデルマウスの凍結胚導入を、今年5月に行う予定である。2系統の凍結胚購入および胚移植による動物導入には、計70万円程度を要する概算であり、昨年度使用できなかった助成金額に概ね匹敵する。
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