研究課題
我々は炎症性脂質メディエーターLTB4の産生酵素であるLTA4Hを脂肪細胞で過剰発現するマウス(A-LTA4HOEマウス)を作成した。本マウスは高脂肪食飼育下で対照と比べ精巣周囲白色脂肪組織重量が大きく、肝重量と肝中性脂肪含量は小さく、インスリン感受性が保持される「脂肪組織の健康的増大」の表現型を示した。そこで、我々がもつ肥満ヒトデータベースを用いて、ヒト脂肪組織中のLta4h遺伝子発現とインスリン抵抗性関連パラメーターの相関を評価した。しかし両者に有意な相関はなく、LTA4Hの産生量変化が肥満病態のインスリン抵抗性形成に関わる可能性は低いと考えられた。次に、LTA4H過剰発現に伴う脂肪組織の健康的増大の機序を探索した。脂肪組織LTB4濃度は、A-LTA4HOEマウスと対照群で変化がなく、本マウスの脂肪組織の健康的増大にLTB4は関与していないと考えられた。LTA4HはLTB4産生作用に加えて、トリペプチドPGPの分解作用が知られている。PGPは免疫細胞浸潤に関わると報告されており、A-LTA4HOEマウスの脂肪組織への免疫細胞浸潤を評価した。すると、表現型が生じていない短期間の高脂肪食飼育下で、本マウスは対照と比し、脂肪組織中M2マクロファージ数の増加を認めた。なお、PGPについては国内で測定可能な施設がみつからなかったため、本学で新たに測定系を確立した。今後A-LTA4HOEマウスおよび肥満ヒト試料を用いて脂肪組織中のPGP濃度の評価を行う予定である。【結論】LTA4H はLTB4産生触媒作用以外の機能を介して肥満病態における脂肪組織のマクロファージ極性変化を抑制し、脂肪組織の健康的増大を促すと考えられる。
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Hepatology Communications
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