今後の研究の推進方策 |
令和3年度の研究成果より、nalfurafine およびU50,488Hはいずれも摂食促進作用を示し、なかでもnalfurafineの作用には側坐核のκオピオイド受容体が関与することが示唆された。そこで、令和5年度は、この作用に関与する神経伝達物質を明らかにする。具体的には、nalfurafine およびU50,488Hの投与により、側坐核の神経伝達物質が変化するかin vivo microdialysis法を用いて測定する。変化が認められた際には、その部位に存在する神経伝達物質の作動薬または拮抗薬を投与し、κオピオイド受容体作動薬の摂食促進作用が変化するか測定することで、どの神経がこの作用に関与するかが明らかになる。 また、κオピオイド受容体による摂食調節にペプチド神経が関与するか検討するため、nalfurafine およびU50,488Hを投与し、RT-PCR法を用いて視床下部における各種神経ペプチドのmRNA発現量を測定する。さらに、nalfurafine およびU50,488Hにペプチド受容体の作動薬・拮抗薬を併用して摂餌量を測定し、κオピオイド受容体の刺激による摂食促進作用がペプチド神経を介するか明らかにする。 NalfurafineやU50,488Hが摂食促進作用をひき起こしたことから、食欲不振や体重減少を呈する動物モデルにおいて、症状を改善できる可能性がある。そこで、フルオロウラシルやシスプラチン、イリノテカンなどの抗がん薬を投与したマウスにnalfurafine およびU50,488Hを併用し、摂餌量や体重の変化を測定する。これにより、nalfurafineまたはU50,488Hが食欲不振や体重減少に対して改善効果を示すかが明らかになり、nalfurafineが新規摂食調節薬として抗がん薬による食欲不振の治療に応用できるか確認する。
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