研究課題/領域番号 |
21K16364
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 督記 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (80876186)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高中性脂肪血症 / 妊娠合併症 / apoA-V / 治療法開発 / 動物モデル |
研究実績の概要 |
野生型およびapoA-V欠損マウス、apoA-V;SREBP-1c両欠損マウスを用いて妊娠中の脂質代謝変化を解析した。野生型マウスでは妊娠末期において中性脂肪(TG)上昇がみられ、出産とともにTGの上昇は解消された。apoA-V欠損マウスではこのTG上昇が著しくヒトにおける妊娠時重度高TG血症を再現していると考えられた。 apoA-V;SREBP-1c両欠損マウスでは妊娠末期のTG上昇が軽減されていた。HPLCによるリポ蛋白動態解析では妊娠末期のTG上昇は大型のリポ蛋白(CM~大型VLDL)の上昇に由来していることがわかった。 妊娠末期マウスの肝臓・脂肪のmRNA発現解析を行った。TG推移を説明しうる因子として肝臓・褐色脂肪組織においていくつかの遺伝子が候補にあがった。 apoA-V欠損マウスの妊娠末期の脂質変化メカニズムを解析するためにヘパリン投与、無脂肪食投与を行った。ヘパリン投与により肝性リパーゼ・リポ蛋白リパーゼはそれぞれ上昇をしたが妊娠・非妊娠における差は明らかではなかった。無脂肪食投与試験では妊娠末期のTG上昇は部分的に改善したが、非妊娠マウスに比べるとTGは高値であった。 以上よりapoA-V欠損マウスはヒト妊娠時高TG血症モデルマウスとして有用であり、そのTG上昇メカニズムとしてはリポ蛋白リパーゼによる中性脂肪分解よりはCM・VLDLの分泌に由来すること、特にVLDLに関してはSREBP-1c-大型VLDL経路が関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
妊娠不成立が想定よりも多く、n数が予定よりも少なくなっている(今後追試が必要となる)。
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今後の研究の推進方策 |
妊娠不成立が想定よりも多く、検体数が予定よりも少なくなっていることから本年度研究実績につき追試が必要である。追試により十分な検体数を得られたところでDNAマイクロアレイ・RNAシークエンス解析による網羅的な遺伝子解析を行う。候補遺伝子が多数となった際には、所属研究室で既に得られている他の環境要因(LXRアゴニストなどの薬剤、高炭水化物食など)での肝臓mRNA発現変化・DNAマイクロアレイの結果と合わせて比較解析し、候補遺伝子を絞り込む。得られた候補遺伝子について、組み換えアデノウイルスを用いたin vivoでの過剰発現・発現抑制実験、阻害薬によるin vivoレスキュー実験を行い、候補遺伝子のin vivo機能解析により、各候補標的遺伝子の治療標的可能性を明らかにする。 並行して、妊娠時HTGにおけるlipolysis、CMの寄与を検討する。 また、治療法の探索として多価不総和脂肪酸・ナイアシンによる妊娠時高TG血症のレスキュー実験を行う。有効であった場合には、これらの薬剤の効果を、apoA-V欠損マウス、apoA-V;SREBP-1c両欠損マウスなどで比較することにより、これらの薬剤の作用機序をin vivoで解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
別途記載の研究進行の遅れにより残余金が生じた。今後研究計画にあわせ次年度に使用を予定している。
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