研究実績の概要 |
1) 薬剤耐性肝癌・膵癌細胞株におけるNrf2の役割の解明 1. ソラフェニブ・レンバチニブ耐性肝癌細胞株の確立と特性の確認。ソラフェニブ・レンバチニブ耐性株は、1週ごとに培養液中の薬剤濃度を0.5マイクロMずつ上げていき、3か月をかけてそれぞれの耐性株を作成した。更にその後3か月間ソラフェニブ・レンバチニブ存在下で耐性株の増殖や形質が安定していることを確認した。ソラフェニブ耐性株の細胞形態は、よりheterogenousで細胞質が豊富であり、耐性株ではソラフェニブへの感受性が低下した。遺伝子発現について、EpCAMやNanogといったstemness markerや、Nrf2、下流のHO-1が耐性株で有意に高発現でした。またABCトランスポーター発現が耐性株で有意に高い結果であった。レンバチニブ耐性株はNrf2の遺伝子発現が増強し、ABCトランスポーター(ABCA6, ABCC2, ABCG2)の発現増強とStemness markerであるNanog, CD44, EPCAMの高発現が確認された。 2. Nrf2ノックダウンによる細胞株の特性の変化に関する検討。Si-RNAによってNrf2発現を抑制すると、ソラフェニブ耐性株におけるstemness markerやABCトランスポーターの発現上昇が抑制され、耐性株で上昇した浸潤、転移能に関しても、Nrf2阻害により抑制された。レンバチニブ耐性株に関しても、siRNAを用いてNrf2をノックダウンすると、耐性株の浸潤・遊走・増殖能は非耐性株と同程度にまで解除された。
2) 薬剤耐性細胞株由来CAFにおけるNrf2 pathwayの検討 現時点で、CAFマーカーであるαSMA、FAPのmRNA発現はソラフェニブ耐性Huh7由来CAF、レンバチニブ耐性Huh7由来CAFいずれにおいてもLX2、親株由来CAFと比較し、有意に高発現していた。またNrf2、IL6発現に関しても同様の結果が確認された。現在再現性につき追加検討中である。
|
今後の研究の推進方策 |
In vitro実験系の再現性を確認検討後、薬剤耐性細胞株由来CAFによる腫瘍増殖能・遊走能獲得の検討 に移行する。その後耐性株由来CAF移植によるin vivoにおける検討を進めていく予定である。Invivo検討に関しては、上記検討2)で作成した耐性株由来CAFを肝癌細胞株とともに4~5週齢Balb/cヌードマウス背部に皮下注射し異所性モデルを作成し、4週間後にsacrificeし、癌進展・転移促進の検討を行い、癌細胞のみを皮下注射した群と比較する予定である。また、ソラフェニブ、レンバチニブ投与による治療抵抗性についても比較検討する予定である。 【予定検討項目】1)腫瘍重量、2)転移巣の検索、3)IHC染色:Ki-76 labeling index, Nrf2、4)RT-PCR: Stemness関連遺伝子発現(EPCAM, CD44, Nanog)EMTマーカー (E-cadherin, N-cadherin)、細胞増殖因子(STAT3, bcl-2, survivin)
|