研究課題/領域番号 |
21K16385
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
西和田 敏 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (80745795)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膵癌 / バイオマーカー / miRNA |
研究実績の概要 |
我が国における癌患者数,癌死亡数は未だに増加傾向にある.膵癌が最も高悪性度の癌の一つであることは論を俟たず,世界的に今後さらに増加していくと予想されている.一方,近年の癌治療の進歩はめざましく,新規化学療法や分子標的治療,免疫療法等により,多くの癌腫において治療成績は徐々に向上している.しかし,特に膵癌における治療成績は未だ満足できるものではなく,5年生存率は8-9%程度に留まっている.膵癌に対する外科治療は唯一の根治治療であるが,膵切除は非常に高侵襲治療であるにもかかわらず,術後再発率が極めて高く,再発後の治療は困難となる.このように,膵癌治療を取り巻く環境は未だ発展途上であり、術前・術後治療を含めた集学的治療戦略の構築が必須である.これらを総合的に考えると,各患者の術後予後リスクを層別化し,不要な手術の回避,または適切な周術期集学的治療提供の指標となり得るバイオマーカーが必要であるが,既存の腫瘍マーカーや臨床因子では不十分であり,新たな観点からの新規バイオマーカーの同定が急務である.今回我々は膵癌術後再発を精密に予測するmiRNAパネルの開発を目的とし,各患者のリスク層別化を図り,手術適応厳密化や術前治療適応の選別による新規集学的治療戦略の構築を目標としている. 当該年度は公的データベースを用いた網羅的解析により,再発に関与するmiRNAを抽出完了している.また,当科で切除を行った膵癌患者のデータ入力・更新を適宜行い,いつでも解析を開始できる状況とした.さらに,切除標本のFFPE検体550例からRNAを抽出することで,今後の検証フェーズに備えている.それと並行し,今後の低侵襲検体での検証に向け,血液検体の保管を順調に進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
公的データベースを用いることで候補miRNAの抽出に関する時間は短縮できている。保管してある膵癌切除標本からのRNA抽出には時間を要したが、全て完了している。実験計画時よりも多くのサンプルを利用可能となっており、さらに充実した実験が遂行できると思われる。以上より、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の実験計画は予定通りである。 術前未治療切除検体コホートによるmiRNAパネルの開発・最適化:まずFFPE検体から抽出したRNAを用いて、選出した候補miRNAに対しqPCRにより各発現量の測定を行う.続いて定量化した各発現量値を利用し,Cox regression modelを用いてmiRNAパネルを創出すると同時に,候補miRNAをさらに厳密に絞り込み,パネルを最適化する.創出したパネルによる患者予後予測能を検証する. 独立した術前治療後切除検体コホートによるmiRNAパネルの予後予測能の検証:真に臨床実用可能なバイオマーカーの開発には,独立した患者コホートによる予後予測能の検証が必須である.さらに,近年の膵癌診療においては術前治療が積極的に行われるようになり,一般的治療になりつつある.開発したmiRNAパネルがこれらの患者群に適応可能かどうかの検証は,バイオマーカーの汎用性の検討において重要な位置を占める.本項目では術前治療後切除例300例のFFPE標本を用いてRNAを抽出し,先の検討で最適化した各miRNAに対し同様にqPCRにて発現量を測定し,miRNAパネルの予後予測能を検証する。 さらに、来年度には低侵襲検体(超音波内視鏡下針生検検体、血液検体)を用いたmiRNAパネルの予後予測能を検証予定であり、これらの検体からのRNA抽出、qPCRを施行予定である。
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