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2021 年度 実施状況報告書

トリプルネガティブ乳癌の薬剤耐性獲得におけるIL-26の機能解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K16389
研究機関順天堂大学

研究代表者

伊藤 匠  順天堂大学, 大学院医学研究科, 博士研究員 (80811835)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードトリプルネガティブ乳癌 / EGFR-TKI / 炎症性サイトカイン / IL-26 / 薬剤耐性
研究実績の概要

EGFRを高発現するトリプルネガティブ乳癌(TNBC)細胞はEGFR-TKIの添加によって細胞死が誘導されるが、IL-26はEGFR-TKIによって誘導される細胞死を抑制し、EGFR-TKI耐性を獲得させることを見出した。このEGFR-TKI耐性メカニズムを解明するため、TNBC細胞株をIL-26刺激した遺伝子サンプルにDNAマイクロアレイを施行し、パスウェイ解析によっていくつかのシグナル経路の活性を見出した。
2021年度では、マイクロアレイデータの解析により得られたデータを元にIL-26が誘導するバイパス経路活性を予測し、EGFR-TKIとIL-26の共刺激によるシグナルタンパクのリン酸化をウェスタンブロットで検証した。
マイクロアレイデータをGene Ontology解析したところ、EGFR-TKIを添加したTNBC細胞は強力な小胞体ストレスを受けて細胞死が誘導される可能性を明らかにした。また、IL-26を添加した細胞ではEGFR-TKIによって誘導される小胞体ストレス関連細胞死に関わる遺伝子群の発現が顕著に減少していた。
このIL-26が誘導する小胞体ストレスの軽減効果の詳細を明らかにするため、TNBC細胞のシグナル活性化をウェスタンブロットで解析した。TNBC細胞株のHCC70細胞はIL-26を添加するとAKTとJNKの活性化が誘導され、EGFR-TKI(Gefitinib)を添加してもこれらの活性化は阻害されないことが明らかになった。さらに、EGFR-TKIに加えてAKTとJNKの阻害剤を添加することで、IL-26によるEGFR-TKI耐性は誘導されず、小胞体ストレスマーカーのDDIT3の発現が増加したことから、IL-26はTNBC細胞のAKTとJNKシグナルを活性化することで小胞体ストレスを減弱させ、EGFR-TKI耐性を誘導している機構が明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2021年度では、EGFR-TKIがTNBC細胞にもたらす細胞死の新たなメカニズムを明らかにし、IL-26のバイパスシグナルの詳細も明らかにできた。これにより、IL-26がEGFR-TKI耐性をもたらすメカニズムの根幹が解明できた。

今後の研究の推進方策

今後は、IL-26が誘導するEGFR-TKI耐性に重要なバイパスシグナルの最上流にあたる新規IL-26レセプターの解明を行う。また、トリプルネガティブ、HER2陽性、ルミナルタイプそれぞれの乳癌患者検体をIL-26で免疫染色し、IL-26を高発現する乳癌タイプや予後との相関を解析する。また、これらの検体はCD4, CD8, CD68, CD163などの免疫細胞のマーカーと共染色し、癌微小環境中でIL-26を特に発現している免疫細胞を明らかにする。さらに、hIL-26Tgマウスを用いたTNBCモデルに対して、EGFR-TKIと抗IL-26抗体とのコンビネーション治療の効果も検討中であり、治療実験で得られたデータを解析し、有効性を明らかにする。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] IL-26 mediates epidermal growth factor receptor-tyrosine kinase inhibitor resistance through endoplasmic reticulum stress signaling pathway in triple-negative breast cancer cells2021

    • 著者名/発表者名
      Itoh Takumi、Hatano Ryo、Horimoto Yoshiya、Yamada Taketo、Song Dan、Otsuka Haruna、Shirakawa Yuki、Mastuoka Shuji、Iwao Noriaki、Aune Thomas M.、Dang Nam H.、Kaneko Yutaro、Okumura Ko、Morimoto Chikao、Ohnuma Kei
    • 雑誌名

      Cell Death and Disease

      巻: 12 ページ: 520

    • DOI

      10.1038/s41419-021-03787-5

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Effector memory CD4+T cells in mesenteric lymph nodes mediate bone loss in food-allergic enteropathy model mice, creating IL-4 dominance2021

    • 著者名/発表者名
      Ono-Ohmachi A、Yamada S、Uno S、Tamai M、Soga K、Nakamura S、Udagawa N、Nakamichi Y、Koide M、Morita Y、Takano T、Itoh T、Kakuta S、Morimoto C、Matsuoka S、Iwakura Y、Tomura M、Kiyono H、Hachimura S、Nakajima-Adachi H
    • 雑誌名

      Mucosal Immunology

      巻: 14 ページ: 1335~1346

    • DOI

      10.1038/s41385-021-00434-2

    • 査読あり
  • [学会発表] Anti-interleukin-26 therapy for the control of chronic inflammation in GVHD.2021

    • 著者名/発表者名
      Ryo Hatano, Haruna Otsuka, Takumi Itoh, Harumi Saeki, Ayako Yamamoto, Yuki Shirakawa, Satoshi Iyama, Noriaki Iwao, Tsutomu Sato, Taketo Yamada, Chikao Morimoto, Kei Ohnuma
    • 学会等名
      第83回日本血液学会

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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