研究課題/領域番号 |
21K16397
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中西 香企 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10836183)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 胃癌 / 肝転移 / KLRG2 / Transcriptome解析 / コンパニオン診断 |
研究実績の概要 |
胃癌肝転移はきわめて予後不良な転移形式であるが、有効な治療戦略の構築が進んでいない。本研究では、次世代シーケンサーを用いた網羅的な解析を肝転移に的を絞って応用することで、肝転移に特化した鋭敏な診断マーカーおよび分子標的治療薬の開発につながる新規標的分子に関する知見をさらに深めることを目的として進めている。独自の転移形式特異的transcriptome解析から胃癌肝転移関連分子候補として同定したkiller cell lectin like receptor G2 (KLRG2)について、胃癌細胞における機能、肝転移形成能への関与、発現度の臨床的意義を調べている。令和3年度は、主として胃癌細胞株を用いたin vitro解析を実施した。安定的にKLRG2を喪失させた胃癌細胞株では、親株と比較して細胞増殖能、細胞遊走能、細胞接着能が低下していた。さらに、細胞増殖能が低下する要因として、アポトーシス細胞比率が増加していることを発見した。KLRG2の悪性腫瘍における役割には未知の部分が大きく、どのような腫瘍関連分子やsignaling pathwayとの干渉を有するのかを知ることは、その特性を理解するために重要である。PCR array解析を実施し、KLRG2発現に強く相関する癌関連遺伝子としてDSC2およびMMP9を同定した。300例の胃癌手術検体を対象とし、癌部および非癌部組織中のKLRG2 mRNA発現度を定量的PCR法で測定した。臨床病理学的因子との相関解析により、癌部KLRG2発現レベルが進行度のみならず累積血行性転移発生頻度に有意に相関することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に沿って実験が進んでいる。in vitroの解析およびmRNA発現解析を完了したことで、令和4年度は予定通り主にin vivo解析およびタンパク発現解析へと進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、研究計画に沿って以下の実験を遂行する。 in vitro機能解析:安定的KLRG2喪失により、胃癌細胞株の5-FUの感受性を評価する。これまでに得てきた発現抑制実験のレスキュー実験としてKLRG2強制発現によって細胞増殖能が増加するかについても確認する。 シグナル解析:令和3年度に同定されたKLRG2の干渉が示唆された分子についてWestern blotting法で詳細に調べる。 in vivo実験:マウス皮下腫瘍/肝転移モデルを作成し、KLRG2喪失による腫瘍形成能の変化を調べる。 発現解析:FFPE組織検体を対象に、免疫組織学的染色で組織中KLRG2発現を調べ、その発現度と、再発形式や予後を含めた各種臨床病理学的因子との相関を解析する。特に、治癒切除後の早期肝転移再発例と、長期無再発生存例の間の発現パターンの相違に着目する。 成果をすみやかに英文論文発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
発現調節試薬、細胞培養試薬(メディウム等)、細胞機能解析に必要なキット類を効率的に使用し節約できたため、経費に未使用分が生じた。次年度にはさらに詳細な細胞機能解析、多検体での発現解析を実施するため、細胞培養試薬類、機能解析キット類、抗体類に使用する予定である。
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