研究課題/領域番号 |
21K16398
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
若原 誠 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (60759893)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Breast cancer / 乳癌 / Maspin / Serglycin |
研究実績の概要 |
先行研究 (Sakabe T, Wakahara M, et al. Sci Rep. 2021) にてmaspinを過剰発現させた乳癌細胞株にてserglycinタンパクの過剰発現を認める結果を得ることができた。Serglycinは細胞内分泌小胞および貯蔵顆粒に存在する細胞内プロテオグリカンで、乳癌を含むいくつかの種類の癌で発現し、悪性度を促進することが報告されている。その結果をふまえ、ヒト乳癌組織を用いてmaspinとserglycinの発現について検討する方針とした。 2008年1月から2015年12月の期間に外科切除が行われた浸潤性乳管癌症例を対象とし、免疫組織化学にてmaspinとserglycinの発現についての関連性を検討した。しかし、maspin発現とserglycin発現について、明らかな相関性を証明することができなかった。 組織化学的手法によってヒト乳癌組織におけるserglycin発現を調査した研究はごく少数であったため、serglycin発現の特性を確認するため、対象症例の臨床病理学的因子および予後との関連性を確認することとした。その結果、serglycin低発現は高い組織学的グレードおよびエストロゲン受容体陰性と有意に相関していた。また、リンパ節転移陽性患者においてserglycin低発現は無遠隔転移再発生存と疾患特異的生存が有意に短いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先行研究の結果と同様にmaspinとserglycinの発現については、ヒト乳癌組織においても相関する結果を予想していたが、明らかな相関性が認められなかった。また、serglycin発現についても、予後不良因子と相関する結果を予測していたが、これまでの研究ではserglycin低発現が予後不良となる結果が示されている。 上記のような乳癌細胞株とヒト乳癌組織における結果の相違を認めたため、研究の進歩状況は予定よりもやや遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
Maspinおよびserglycinについては、これまでの研究過程をふまえた上で、ヒト乳癌組織における特性をより詳細に検討する必要があると考える。 我々はこれまでにヒト乳癌組織において細胞質に発現するmaspinが予後不良であることを報告している (Umekita Y, et al. Int J Cancer 2002, Wakahara M, et al. Anticancer Res. 2017)。しかし、今回のmaspin発現を評価した抗体 (clone G167-70) はこれまでに使用した抗体 (clone EAW24) と異なっているため、それぞれの抗体の特性を調べることを検討している。 Serglycin発現についても、in vitroで乳癌細胞に浸潤と転移をもたらすことが報告されているが、自発的な腫瘍増殖抑制因子として作用する可能性についても報告されている。ヒト乳癌におけるserglycin発現についての研究は非常に少なく、さらに多くの臨床サンプルを使用した検討を行うことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進歩状況が遅れたため、予定していた細胞株を用いた研究などのより費用が必要な工程が行えなかったことが主な理由と考える。工程が順調に進めば、本年度に行えなかった研究を次年度に行う予定である。
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